「アンマーとぼくら」

「アンマーとぼくら」

有川ひろ

講談社文庫

2020年8月12日第1刷発行

 

 

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年明け早々、1都(東京)3県(千葉、埼玉、神奈川)の緊急事態宣言。関西の2府(大阪、京都)1県(兵庫)も、政府に緊急事態宣言を要請。新聞情報では、疫学的に証明不能なコロナ感染の増加らしいです。

 

そんなこと言われても、昨年来のデーターを元に専門家が、様々の検討をして、コロナ対策の提言をしているのではないですか?さらに、コロナの専門家は、いないなんて開き直っている方もいるらしい。さいごは、政治の仕事?

 

さて、新年初の座禅会に行ってきました。外気温は、摂氏1度。風が冷たくて、こりゃ、たまりません。龍象院のご本尊(聖観音菩薩)に新年のご挨拶。縁側から庭が見える座敷は、住職が、暖房用のストーブをつけてくれましたが、気温は、摂氏8度。

 

座敷の畳が冷たい。坐禅は、修行・・・甘いことを言ってはダメ。住職・・・すごい。裸足です。ぼくは、ヒートテックで完全防備。さらには、半跏坐に組んだ足の上にはひざ掛けをかけて、これで、坐禅。今、風邪を引いたら、PCR検査だからね。

 

準備万端で・・・チ~ン、チ~ンと鈴(りん)の2音・・・静寂、風の音、風がガラス戸を揺らす音、鳥の鳴き声・・・ひたすら、数息観(呼吸を数えて全集中)・・・おおむね35分かな?・・・チ~ン、チ~ン、チ~ンと鈴(りん)の3音。

 

ありがとうございました。

 

いやいや、余談が長くなりました。

 

有川浩さん」、いつから、「有川ひろ」、と改名されたのか?ぼくの好きな作家のひとりです。久しぶりに、有川ワールドを堪能しました。じっくりと読ませていただきました。今更、紹介すことはないと思いますが、「阪急電車」「植物図鑑」「旅猫リポート」「明日の子供たち」などは、優しい気持ちになれる小説です。お薦めです。

 

「アンマーとぼくら」・・・「アンマー」とは、沖縄の言葉で「おかあさん」。「ぼくら」は、たぶん、主人公のリョウとリョウのお父さん、だと思います。

 

北海道で育ったリョウは、小学生の時に「お母さん」が亡くなります。その後、写真家のお父さんが沖縄の「おかあさん」と再婚したので、沖縄に移住しますが、お父さんも、まもなく、事故で亡くなります。

 

数年たって、東京で仕事をしているリョウは、3日間の休暇中、久しぶりに沖縄で「おかあさん」の言いなりに思い出の場所を巡ります。まるで、沖縄の観光スポット巡り。

 

『沖に   白い竜が何匹ものたくっていた。

きっと、珊瑚の環礁があるのだろう。かなりの沖合なのに、白波の帯が立っている。

その白波の帯はゆるやかにうねり、のたくり、何本もおおらかに絡み合い  正に、白い竜が白い竜が水の中で戯れているような。

「まるで竜だね」

沖縄は竜に守られた島なんですね!』

 

沖縄に行かなくても、沖縄を満喫できました。もちろん、リョウと「お父さん」そして、「おかあさん」の物語は、目に涙を溜めることになります。

 

「おかあさん」の車のダッシュボードのなかに、分厚い大判の封筒。四つ切の写真。最後に、竜馬へ・・・父より。

つぶやき、謹賀新年

つぶやき、謹賀新年

 

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あけましておめでとうございます。

 

令和3年(2021年)。

 

今年の正月は、外出自粛が求められているので、・・・午前中は、自粛して、午後から、湊川神社に初詣に出かけました。湊川神社は、いつもの、三分の一ぐらいの参拝客でした。自粛要請の効果ありかな。

 

いつものように、お札と熊手とお守りを求めて、お神籤もひきました。なんと、今年の運勢は「第31番 凶」。人生で初めて、ひきあてた「凶」。これは、これとして、珍しいことです。

 

持って帰ろうかなと思いましたが、細君から、神社に納めなさいと言われて、「ハイ!」。

 

そのあと、ハーバーランドの「Eggs Things」で、コーヒーとパンケーキ。あとは、大人しく、帰宅しました。ハーバーランドも、例年の三分の一ぐらいかな。

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なんとも、寂しいお正月でした。

 

昨年は、コロナ(第1波)、コロナ(第2波)、コロナ(第3波)で、鬱としい1年でした。第3波は、今も、継続中ですが、さて、どうなることか?

 

わが家においても、身近にPCR検査の陽性者の話がチラホラと聞こえ出して、あながち、よそ事ではなくなってきています。今まで以上に、(というか、これ以上どうするかは分かりませんが)注意をする必要があるのかな。

 

さて、今年の言葉は、「泰然自若」(presence mind)です。コロナ禍のなか、落ち着いて、物事に動じず、穏やかに、過ごしたいものです。

 

でも、ぼくは、すぐに、右往左往しそうです。

 

それでは、皆さまにおかれましては、3密を避け、マスク、手洗い、うがいを励行して、健康には、十分にご留意ください。

 

そして、今年も、「dandy-papaの休日」をよろしくお願いいたします。

「定年から始める男の手料理」

「定年から始める男の手料理」

北連一

実業之日本社

2007年9月20日初版

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2020年(令和2年)も、いよいよ、年越しです。何もしなくても、時は、過ぎていき、また、ひとつ年を取っていきます。もう、取りたくないのに、そんなお願いは、神様も、仏さまも、聞き入れてはいただけません。

 

子どもの時は、早く大人になりたい・・・青年時代も、早く大人になりたい・・・荘年時代も、早く大人になりたい・・・中年時代は、・・・早く定年になってのんびりしたい。そして、定年になって老年時代は、年を取りたくない。

 

おっと、こんなネガティブな考え方では、いけません。年をとることをポジティブに考えて、もっと、年を取って、70、80、90・・・の世界を見てみたいと考える。そう、「ポジティブ シンキング」で、来年も、それなりに人生を楽しみましょう。

 

って、昨年、無所属になるときに、「男の手料理」と思って、この本を購入して、四分の一ぐらい読みました。コロナ禍のなか、そのことに気づいて、再度、読もうと思いましたが、どうも、今一つ、気持ちが乗りません。

『料理をすれば能力がアップし、老化を防ぐ。

  料理をすれば魚、野菜の旬、季節に敏感になる。

  料理をすれば妻に感謝される。

  料理をすればヒマを持て余すことがない。

  料理をすれば世の中が見えてくる。』

 

「料理をすれば」の前提が、どうも、しっくりこないのです。

 

『料理をしなくても、毎日、ラジオ英語を3番組聞いています。語学は、右脳と左脳の交流を促進して脳を活性化させるとのこと。

 料理をしなくても、毎日、朝、昼、夕方、散歩に出かけます。とくに、田んぼや畑の周りを散歩すると、耕作された作物で季節に敏感になります。

 料理をすると妻に嫌がられます。・・・キッチンを汚す。お皿や調味料の置き場所が変わる。

 料理をしなくても、テニス、散歩、ウクレレ、お習字、読書などで、毎日、忙しい。

(そうそう、新企画。「ウクレレ・ソロ100曲アップ」、フェイスブックで動画配信を始めました。)

 料理をしなくても、新聞を隅々まで読んでいると世の中が見えてきます。』

 

と言うことで、ぼくは、無理に、料理はしないこととしました。ただし、細君と一緒に在宅しているときは、ぼくが、お昼の当番です。お昼前になったら、お弁当を買いにダイエーにひとっ走りするのが、ぼくのお役目。

 

若しくは、あっし~君になって、二人で、ランチをする。この方が、細君は、喜びますよ。ぼくが、料理するよりは・・・。そこで、つねに、フェイスブックで、県内のランチ情報をチェックしてメモしています。

 

この本は、もう、ヤフー オークションか、メルカリで、転売ですね。

 

今年1年、「dandy-papaの休日」を覗いていただき、TO Say Thanks.

来年も、よろしくお願いします。

 

Dear everybody, I hope you have a happy new year!

Take care!

ぶらり~須磨水族園

ぶらり・・・須磨水族園

 

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またまた、競馬の話で恐縮です。今年は、コロナ禍で、無観客競馬などで異例の中央競馬ですが、またまた、とんでもない記録がでました。

 

先週のG1レース。阪神ジュベナイルフィリーズ(2歳・牝馬)で、白毛のお嬢さんが一着入選。ほんとうに、白馬が陽の光に輝きながら、ターフを駆け抜けました。その名は、「ソダシ」。騎手は、吉田隼人

 

何が、すごいかと言うと、馬の毛並みは、黒毛、鹿毛、栗毛、芦毛など、毛の色によって各種ありますが、白毛は、とても、珍しい。デビューするサラブレッドのうち、1000頭に1頭らしいです。とすると、年間、6000頭がデビューしますから、白毛馬は、6頭。

 

その希少な白毛馬が、なんと、G1で勝つとは・・・当然、史上初の出来事です。そもそも、白毛馬がG1に出走することも、ぼくは、記憶にありません。そんな驚きが、先週、あったのです。

 

これで、来年の春のクラッシクシーズンの楽しみが増えました。桜花賞で、阪神競馬場の桜吹雪の中を、「ソダシ」という白毛馬が、駆け抜けるシーンを想像するだけで、胸が躍ります。

 

余談が、長すぎました。さて、今年一番の寒さのなか、「須磨水族園」に行ってきました。

 

なんで?

 

このブログでも紹介した「須磨おやじ塾」の野外活動です。朝、10時、平均年齢65歳超のおやじ達が、20名、須磨水族園の入り口に集結。横を、マスクをしたちびっ子たち・・・幼稚園の遠足らしき集団が通り越していきました。

 

いまどき、水族園に来るのは、シルバーのオヤジか?幼稚園児か?60年以上の世代格差。そりゃそうです。平日、中間層は、学校に行っているか、仕事をしているか。

 

平和ボケしたオヤジ達は、これもシルバー・ボランティアの案内係の方に引率されて、園内の見学に出発します。

 

最初は、「ジョーズ」・・・ホオジロザメのはく製・・・これって、落ち武者の首実検みたいで、残酷じゃないですか?このサメ、高知沖で漁師の網に引っ掛かったらしいですが、お腹に子供がいたとのこと。その子供のはく製も、横に並んでいました。世界残酷物語

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入口、正面は、大水槽・・・さかなクンが回遊していますが、オヤジ達の話題は、あの魚は、刺身にすると旨いよ・・・。

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水族館の人気者の三連発です。

 

まずは、ペンギンさん。元気に水槽で泳いでいました。

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つづいて、ラッコさん。ちょうど、飼育員のお姉さんから餌をもらっていました。

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そして、最後は、花形のイルカさん。見事なジャンプ力。大きなしぶきを上げて着水。観客席の前の方は、水かぶりです。

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水族館って、何年ぶりでしょうか?たまには、お魚を見ながら、人生を振り返るのもいいかも。

 

「ヴィオラ母さん」

ヴィオラ母さん」

ヤマザキマリ

文藝春秋

2020年10月25日第7刷発行

 

 

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6時、起床。散歩に出かけて、6時半帰宅。自分の部屋で、7時過ぎまで、新聞を読む。日経新聞の「私の履歴書」、新聞小説の「ミチクサ先生(伊集院静)」は絶対の日課

 

7時過ぎからNHKニュース「おはよう日本」を見ながら、朝食を済ませて、お片づけをする。ソファーに座って、「おちょやん」を見て、「あさイチ」を8時半ぐらいまで見る。そして、食後の歯磨きのあと、自分の部屋でゴソゴソし始める。

 

これが、ほぼ、ぼくの毎日の日課

 

あさイチ」の金曜日は、ゲストが出演する。あるとき、「ヤマザキマリ」さんでした。ヤマザキマリさんは、本業は、漫画家かな?「テルマエ・ロマエ」の作者だそうです。最近は、物書きとして、いろいろ人生指南的なものを書いているようです。

 

あさイチ」に出演した時の話が面白かったので、買ったのが、「ヴィオラ母さん」です。まったく、すぐに感化されるのが、ぼくの悪いキャラクターですね。

 

そうそう、話はごろりと変わりますが、日本では、「あさイチ」といえば、ワイドショーといいますが、これは、まったくの和製英語らしいです。英語に訳すと、

The morning tabloid news shows

The morning entertainment news

The morning talk shows

らしいです。って、どうでもいい話でした。

 

さて、「ヴィオラ母さん」って、どんな内容?これは、小説ではありません。ヤマザキマリさんの母親のお話。母親は「リョウコさん」といいます。この方、書かれている内容が誇張の無い事実であれば、相当な破天荒な女傑ですね。

 

・・・でも、多分、話を面白くするために誇張されていると・・・ぼくは、思いますが、それは、ヤマザキマリさんに聞いてみないとわかりません。

 

「リョウコさん」のこと、簡単にご紹介すると、現在、御年八十八歳(昭和八年生れ)。良家のご令嬢の育ちらしいです。女子大学を卒業後、会計事務所に勤めていましたが、二十七歳のとき、札幌交響楽団ヴィオラ奏者として、加入。

 

当然、単身、北海道に移住。それから、親とは絶縁とのこと。指揮者の男性と結婚して「ヤマザキマリ」を出産するが、その男性は、早くに他界。それから、シングルマザーとして、演奏活動と子育てに大奮闘。その大奮闘は、波瀾万丈な人生だったらしいです。

 

『この本は、子育てや女性の自立を支えるハウツー本ではないし、そもそも多様な悩みを抱えた昨今の日本の女性たちの役に立つかどうかもわからない。でもひとまず、鼻息荒く駆け抜ける野生の馬のように自分の選んだ仕事をし、子供を育ててきた一人の凄まじき女の姿を思い浮かべてもらうことで、自分や子供の未来に対してどこまでも開かれた、風通しの良い気持ちになってくれたら筆者も嬉しく思う。』

 

とのことです。人は、何か一つ、他者から抜きにでるものがあることは、幸せなことです。「リョウコさん」は、音楽・・・ヴィオラがそうだったのでしょう。だから、ヴィオラを信じて、一見、破天荒に見えるような人生ですが、確信した人生を送ってこられたと思います。・・・ぼくには、ないものです。

 

「五体字典」

鈴木香雨

文海堂

昭和45年12月30日発行

 

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 ぼくが、お習字を始めたことは、ブログに書きました。

 

早いもので、もう、1年が過ぎました。すぐに飽きるかと思いましたが、他に、特別、やることもないので今日まで、続いています。が、最近は、少しずつ、面白さ・・・というか、「漢字」という文字に興味がわいてきたようです。

 

先月からは、条幅にも手を出して、50年ぶりに、狭い机のうえで、工夫しながら書いています。「首をひねりながら」、行書や草書も、お手本を参考に、書いていますが・・・。

 

「首をひねりながら」とは、字の崩し方がわからない?書き順がわからない?

 

そんなとき、お役に立つのが、「五体字典」です。ぼくの「五体字典」は、高校のときに買ったものなので、昭和45年発行のものです。

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古いものを大事に持っているよネ。

 

「五体字典」って何?「篆書体、楷書体、隷書体、行書体、草書体」と、五つの書体を表わした「漢字」の書き方の辞書です。

 

『「天地をうごかすばかりの言の葉の誠の道をきわめよ。文字は心の声、書は心の鏡。」というごとく、書はその人の心を反映させるものです。

漢字を正しく学ぶには、先ず、其の変化の順序を知らねばなりません。と同時に字を上手に書く、書写能力を向上させる、美的情操の涵養、人格の修養という点にあります。

(著者の言葉から)』

 

成程、ぼくのお習字が、やがて、書道となるのは、何時のことかはわかりませんが、これも、修行ですか?

 

しか~し、便利になったものです。2つの無料アプリを見つけました。ご紹介しましょう。

 

「書道辞典」すべての書体が網羅されているほか、王義之、顔真卿などの書家の墨蹟の写真を掲載・・・これって、中国のアプリかな?そこが、ちーと、ヤバそう?

 

「筆順辞典」・・・漢字の筆順が一目でわかる。これは、便利です。お習字をやらない方も、これは、ダウンロードお薦めです。難しい漢字の筆順は、ある意味、芸術ですよ。

 

これがあれば、「五体字典」で、ページをめくる必要がなくなります。ほんと、世の中、便利になりました。それでも、やはり、アナログなやり方も、捨てがたい。古い人間だから、仕方がない。

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あっ、そうそう、写真の条幅・・・中途半端ですが、あそこで、墨がなくなりました。ぼくは、墨汁を使わないので、墨がなくなれば、本日の練習はおわりです。

 

それでは、また、明日か?明後日か?墨をすりすりして、「全集中の呼吸」で、「美的情操の涵養、人格の修養」に励むこととします。

 

「スパイの妻」

「スパイの妻」

行成 薫

講談社文庫

2020年10月7日第4刷発行

 

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巻頭の写真、どこか不思議だと思いませんか?

よ~く、見てください。

わかりましたか?

 

そうです。この写真、部屋の中から、黒く磨き上げられた座卓に、スマホをセットして、外のお庭と、座卓に写り込んだ景色を撮影したものです。きれいでしょう。

 

場所は、福崎の「応聖寺」です。左程、大きなお寺ではありませんが、本堂からお座敷に入ると、裏山の綺麗な紅葉を見ることができます。

 

ぼくが、この写真を撮った後にも、お若い女性のグループが、同じようにスマホをセットして、撮影していたので、「インスタ映え」するってことかな。

 

お抹茶と和菓子の「お!も!て!な!し!」もあります。真っ赤な毛氈のうえに座って、ゆっくりとお庭を鑑賞しながら、お抹茶をいただくことができます。こんなとき、日本人でよかったね。

 

「スパイの妻」

 

ただいま、上映中の映画の原作本です。

 

ときは、太平洋戦争前夜。ところは、神戸・・・この小説、舞台は、神戸、そして新京、哈爾濱(ハルピン)です。

 

主人公は、貿易商の妻、福原聡子、夫の優作。

 

物語は、八重子(聡子の子供)の息子が、片づけをしていた二階から、古い映写機とフィルムを見つけたところから始まります。それを見たとき、八重子は、「スパイの子」と揶揄された幼いころを思い出しました。

 

賢明な読者の方は、もう、お分かりだと思います。「べた」な物語の始まりです。そう、そのフィルムには、母であり、祖母である聡子の姿が写っていました。

『「スパイの妻」と書かれたフイルムに残っていたのは、生前の母の姿だった。どういった意図で作られた映像なのかはわからなかったが、化粧をし、洒落た洋服で着飾った母の姿に、八重子はひどく驚いた。八重子の記憶の中の母は、化粧っ気がなく、服装はいつも量販品で地味だったからだ。だが、壁一面に映った母の顔は、凛としていて、とても美しかった。』

小説の場面は、戦前の神戸に大きく展開します。

 

聡子は、貿易商の夫と、幸せな生活を送っていました。あるとき、夫の優作は、関東軍との薬品の納入の取引で満州に出張します。ところが、満州から帰国した優作の様子に異変を感じました。満州で、優作に何があったのか?

 

聡子の周辺に、憲兵隊や特高の影が・・・。そして、謎の女性、草壁弘子の存在。夫は、スパイなのか?何も、話してくれない夫・・・。

 

久しぶりのサスペンス小説でしたが、ただし、なんというか?「キレ」が、いまいちという感じでした。サスペンスは、ドキドキ感と「謎」が「謎」を呼ぶという展開に「キレ」が必要でしょう。たぶん、先が読めてしまうためでしょうか?

 

映画は、好評らしいですが、まあ、コロナのこの時期、シアターに足を運ぶのは、ちょっと、敬遠ですね。