容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

■容疑者Xの献身
「容疑者Xの献身」(東野圭吾)「探偵ガリレオ」シリーズの直木賞受賞のミステリー。月9のテレビドラマ「ガリレオ」で人気沸騰中です。先週、図書館のタイトルで書きましたが、久しぶりにミステリー小説を読みました。
ミステリー小説なので略筋を説明するとこれから読む方に失礼なので、あまり、内容はご紹介しません。
小説の始まりは、花岡靖子と美里の親子が、離婚して別れた夫(父親)富樫慎二を、たまりかねて靖子のアパートで殺害する。その場に、隣人の高校の数学教師である石神が現れ、親子2人の殺害の証拠隠しを手伝う。彼の緻密な計算に基づく証拠隠滅。警察の捜査の手が、花岡親子、石神に伸びる。そこに、帝都大学物理学科第13教室准教授湯川学が登場する。通称「ガリレオ」。湯川学と石神は、帝都大学の同級生であり、片や物理学、片や数学に道は分かれるが、お互いを認め合った友人であった。そこから、湯川の謎ときが始まる。さて、石神が仕掛けた完全なる証拠隠滅のトリックとは。そこには、運命の数式と命がけの純愛が生んだ犯罪があった。
その運命の数式とは、P≠NP問題「P is not NP」。この数式の意味は、「計算複雑性理論(計算量理論)におけるクラスPとクラスNPが等しくないという予想である。」「理論計算機科学と現代数学上の未解決問題の中でも最も重要な問題の一つであり、2000年にクレイ数学研究所ミレニアム懸賞問題の一つとして、この問題に対して100万ドルの懸賞金がかけられた。」ということですが、何故、この数式が、この小説における運命の数式なのか。
そして、この数式と次の石神の言葉「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうか確かめるのとでは、どちらが簡単か?」
この言葉が、トリックを説く鍵となります。小説を読むためにP≠NP問題を知っておく必要はありませんが、その世界では、どうも未解決の問題と言うだけです。
東野圭吾は、大阪府立大学電気工学科卒業なので、物理、数学には、蘊蓄があるのでしょう。テレビドラマの「ガリレオ」でも、物理に関することがドラマのツールに使用されています。
同じように数学が随所に出てくる小説に、映画化もされた「博士が愛した数式」があります。この小説では、数学の基礎となる整数、素数などの用語が多く使用されていました。作者の芥川賞作家の小川洋子は、早稲田第一文学部の卒業なので、何故、数学を小説のツールに使うことができたのでしょうか。小説の構想を練る段階で、記憶が消えていく博士にとって、数学が一番、適していたのでしょう。そのために、作者は、数学の本を読み漁ったのだと思います。
小説を書くのも、私小説ならいざ知らず、大変な勉強と資料の収集が必要なのでしょう。昔、丹羽文雄の「小説作法」という作家を目指す人の教科書的な本を読んだことがありましたが、小説は、資料の収集がキーになるということが書いてあったと思います。
探偵ガリレオ」シリーズの既出版本も読みたくなる本でした。