トップの素顔論(その2)

傷

■トップの素顔論(その2)
昨日に引き続き「トップの素顔論」の残りの5人の方との対談の中で、私の気に入ったセンテンスの一部を、それぞれ紹介します。
その前に、昨日も書きましたが、幸田真音の「傷―邦銀崩壊―」のあらすじを併せて紹介します。上下二巻の文庫本ですが、上巻では、将来を嘱望された大手邦銀ニューヨーク支店のデイラーが、ニューヨークのホテルから飛び降り自殺するところから物語が始まります。彼は、死の前日、偶然に旧友の芹沢と再会し、謎のメッセージを残します。突然の旧友の死に衝撃と責任を覚えた芹沢は、旧友の死の真相を探ろうとします。探っていくうちに、ウオール街でその名を知られた女性デイラー有吉の影がちらつき始めました。最初は、くどくて解りにくい設定ですが、読み進むにつれて、金融ミステリーとして物語が展開していきます。下巻では、思わぬ展開となります。上巻では、悪女と思わせていた有吉。下巻では、芹沢と組んで邦銀の損失隠しの裏をあばきます。金融システム、邦銀の裏側、MOFの裏側をするどく描いています。読み進むに従って、緊迫感が出てきて、読む速度が速くなってきます。金融システムが詳細に記述されており、かなり、専門性があって、面白く仕上がっています。お薦めの金融ミステリー小説という新たなジャンルと言えるともいます。幸田真音は、そういった小説を書く小説家です。
それでは、本題の5人の方を紹介します。
浅井慎平 写真家、ビートルズの来日写真でプロとして評価される。
幸田から写真で自分の伝えたいものを表現することって、という問いかけに対して、
浅井「写真って1枚の紙にしか過ぎない。撮った対象がどんなにすばらしいものでも、1枚の紙にしてつまらなければ意味がない。逆に、つまらない対象でも、1枚の紙にした時にすばらしいという奇跡が起こる。それが写真家の仕事ですね。僕は、他の人が見過ごしてしまうようなものの中に何かを見つけた時に、非常にうれしいと感じるのです。」
児玉 清 俳優、読書かとして書評に定評がある。
幸田から書評は、自分が小説かだけにつらい仕事ではっと、話を向けられて、
児玉「批評ならお金をもらわずに、どんなに厳しいことを書いても構わない。しかし解説はお金をもらって書くのだから、褒めなきゃいけない。どんな悪い作品でも良いところはあるはずだから、それを褒めろ。っと淀川さんに、解説と批評を間違えるなと教えられました。あれは、今でも身に染みていますね。」
西室 泰三 東京証券取引所会長、東芝相談役
幸田から従業員のモチベーションをあげる方法を問われて、
西室「日本では、上の人だけが知っていればよくて、下の人は上の人の言うことを聞いていればよいという風潮がある。アメリカの企業では、情報の共有を徹底してやります。だから、東証では、情報格差ができないように努力しているんですが、それをやると、従業員の意識が変わってきますね。」
清武 英利 読売新聞運動部長を経て読売巨人軍球団代表
幸田から新聞記者として取材する立場から、球団代表として受ける立場にかわって、ものをいうことの難しさを感じていますか、
清武「うちの広報部長のことを野球用語を使って「自衛隊」と呼んでいるんです。自衛隊って専守防衛ですから、守ってまかりですから、うるさくなりますよね。僕は、ネアカなものだから、ついしゃべっちゃう。「ネアカのびのびへこたれず」、って誰か言ってました。」
塩川正十郎 元財務大臣、「塩じい」と呼ばれて、辛口コメントで親しまれている。
6つの辛口コメント
「マスコミの政権たたきに異論あり」「白票でもいいから投票に行け」「毎朝三十分の日記で前日の反省」「格差社会の定着は危険だ」「政治家が週刊誌を怖がってどうする」
以上、前日に引き続き、残りの5名の方の主張を紹介しました。
幸田真音が、それぞれの方の話を引き出し、それぞれの方の素顔が見えてくる対談集でした。