四つ葉のクローバー

クローバー

■四つ葉のクローバー
春の訪れとともに、細君と相棒のダックスフンドとの2人と一匹の散歩の途中で、様々な花が目につくようになってきました。
お隣のマンションの緑地帯には、ツルニチソウが小さな薄青い花を一面に咲かせています。また、近くのグリーンベルトには、赤いボケの花が点々と咲いています。高塚公園に行くと、桜が一分咲きの木もあります。調整池の花壇には、白い雪柳が、頭をたれるように、たくさんの小さな花をつけています。道端には、カラスノエンドウが、申し訳なさそうに紫色の小さな花をつけています。名前の解らない花もあります。
「この花、何て言うんだろう。」花に詳しくない私が、細君に教えを請います。
「さあ、何だろうね。」細君も、解らないようです。
「そういえば、オオイヌノフグリっていう花を知ってる?」私が、小説に出てきた花の名前を聞きました。その小説を読んでいる時には、何だか意味が解らなかったので、あとで、インターネットで調べてみると、花の名前だと判明しました。小さな瑠璃色の4枚の花弁の花ですが、何とも気の毒な名前の花です。
「知ってるよ。でも、この辺りでは、見ないね。」
「へえ、知ってるんだ。」細君の意外な博識にちょっと驚きながら、NECの敷地の緑地へと散歩は、続きます。最近、この場所が、相棒のお気に入りです。芝生の緑地を、走りまわるのが面白いようです。細君と私は、勢いよく円を描くように走り回るその姿を、笑いながら眺めています。
ふと、横を見ると、細君が、腰をかがめて、何かを探しているのです。
「見つけた。」素っ頓狂な細君の声が、聞こえました。相棒は、「ワン、ワン」
「どうしたの?」
「四つ葉のクローバー見いっけ!」
「ああ、いいな!」私も細君に続けとばかりに、別の場所にしゃがんでクローバーの群生をかき分けます。何だか、目がチカチカしてきます。緑の三つ葉のクローバーばかりです。何をやっているのか、不思議に思って、相棒が近づいてきて、私の指の先に鼻をくっつけてきます。
「邪魔しなでよ。」相棒は、邪険にされた腹いせに、そばでマーキングを始めます。
「えっ、何やってんだよ。」そんなことは、お構い知らず、相棒は、我が道をゆく。
「おお、すごい。四つ葉の下にもう一つ葉っぱがある。五つ葉だよ。」私は、勝ち誇ったように立ち上がり、その時、下を向いていて急に立ち上がったので、ちょっと、立ち暗みを感じました。
「えっ、それって、変だよね。」細君は、私の五つ葉のクローバーを怪訝な顔で覗き込み、確かに、少し、不格好な五つ葉のクローバーの葉の数を数えていました。
兎にも角にも、取りあえず、四つ葉のクローバーとちょっと不格好な五つ葉のクローバーを見つけることができ、それぞれの小さな幸せを感じながら、その場を家に向かって立ち去りました。
途中で、クローバーの群生を見ると、性懲りもなく二人して、しゃがみ込みもう一匹のドジョウを探しますが、二匹目のドジョウを見つけることは、とうとうできませんでした。もう一つ見つかれば、二人の間を短い脚で跳ねるようにして、チョコチョコと懸命に付いてくる相棒にも、小さな幸せをプレゼントできたのに、でも、その意味は相棒には解ってもらえないでしょう。相棒には、ジャーキーの方が、きっと、小さな幸せだからです。