人は仕事で磨かれる

人は仕事で磨かれる

久しぶりにビジネス書を読みました。時には、ビジネス書もいいものです。小説は、架空の世界ですが、ビジネス書は現実の世界です。特に、評論家が書いたものよりは、実際の経営者が書いたものの方が、その人の人となりを知ることができるし、その人の生き方を知ることができます。そこに、私自身の生き方や考え方を示唆するものを見つけることができるからです。「人は仕事で磨かれる」著者は、丹羽宇一郎さんです。
丹羽宇一郎さんは、伊藤忠商事の社長に就任する時に、6年で辞めると公言され、そのとおり、6年で社長を退任された決断の経営者です。経営者として、会計基準のグローバルスタンダード化を前にして、伊藤忠商事で固定資産の減損会計を適用して、4000億円の不良資産の一括処理をし、その後、無配から史上最高の利益を計上するまで、会社を導いたことは、特に、有名なことです。
現在、経済財政諮問会議委員や地方分権改革推進委員会委員長の公職にあり、先日、新聞で歯に衣着せぬ発言で官僚を批判していた記事を記憶しています。
本の中では、経営者のあり方をするどく主張されていますし、また、サラリーマンの働き方についても厳しく書かれています。一言で言えば、気力と自信に満ち溢れた方だなと思いますし、こうでなければ経営者は、務まらないものであろうと、別世界の、別の人種を見るように面白く読ませてもらいました。
丹羽語録を紹介します。

「汗を出せ 知恵を出せ モット働ケ」
「経営は論理と気合いだ!」
「クリーン、オネスト、ビューテイフル」
会社法成立からたかだか百数十年、会社は永遠ではない」
「声なきは、会社に対する反逆である」などなど

特に、丹羽さんが、随所で主張されているのが、「クリーン、オネスト、ビューテイフル」です。

社員の意識改革については、どんなに不良債権を処理しようが、新しいビジネスモデルを確立しようが、それを動かす人間が正しい倫理観を持たなければ、何をやってもうまくいかない。したがって、私は「クリーン、オネスト、ビューテイフル」と社員に言い続けているわけですが、社員が本当に理解してくれなければならない。
そのために、社員との対話を繰り返すこと、そしてトップに立つ人間こそ、「クリーン、オネスト、ビューテイフル」を率先垂範していくことです。

驚いたことに丹羽さんは、電車通勤を続けられたそうです。目的の一つは、ご自宅が始発になるため、座ってゆっくり本を読むことができるという理由で、もう一つは、社員と同じ目線に立つことができるということだそうです。
最後に、次のように締めくくっています。

緊張を伴う仕事であればあるほど、そこから得られるものも大きいはずです。人間として一回りも二回りも成長していくことができる。
「人は仕事で磨かれる」という真意は、ここにあるのです。