「本当に生きた日」

本当に生きた日

「本当に生きた日」
ブログを書き始めて、1年が過ぎました。
1年間、サラリーマンの休日を思うがままに書きたい事を書いてきたつもりですが、実は、日曜日にブログをアップすると、翌日の月曜日から、「さて、来週は、何を書こうかな。」っと知らず知らずのうちに、そんなことを考えるようになりました。そうだからと言って、書き始めると1時間程度で書きあげて、ろくに校正もしないでアップしているので、後日、読み返してみると読みづらい個所も多々ありました。次の1年に向けての反省点です。
そこで、次の1年に向けて、少し、気持を新たにするためにテンプレートを変更しました。これからも、反省点を踏まえながら、時事問題、身近な出来事、書評などなど、勝手気ままに「dandy−papaの休日」を書いていこうと思っています。

「本当に生きた日」
 城山三郎
 新潮文庫
 平成20年4月1日発行
 743円

本の帯にも書かれていますが、城山文学の異色作です。城山さんの小説で、女性が主人公のものを始めて読みました。城山さんがお亡くなりになって、単行本、文庫本として出版されていますが、昭和61年に琉球新報に連載した新聞小説だそうです。小説の内容から、城山さんの晩年の作品ではなく、むしろ「官僚たちの夏」などの初期の作品に近い感じを受けましたが、モデルがいるわけではなさそうです。
二児の母親で専業主婦の素子は、夫の単身赴任を機に、友人のルミに誘われて、ルミの経営する「家庭人材研究所」の副所長としてルミを手伝うことになります。研究所といっても、2人のほかにもう2人の女性社員がいるだけの研修講師の派遣や市場調査などを請け負う小さな会社です。ルミにも家庭があり、姑、連れ合い(ルミは、夫をそう呼んでいます。)、息子の4人家族ですが、家事は姑に任せて、自分は、女性としての自立とサクセスを目指しています。
そんなルミの仕事を手伝いながら様々な出来事に翻弄されながらも、家庭との両立を図ろうとしますが、仕事に没頭すればするほど、家庭に影響が出てきます。夫は、単身赴任で妻の仕事に理解を示しますし、子供達も、母親の仕事に理解を持っていますが、少しづつ歪みがでてきます。その歪みを感じながら素子は、女性が働くことと、女性が家庭を守ることと、そして自分の人生について悩みます。
妻であり母親である女性にとって、「本当に生きた日」とはどういう日なのか。小説の中で出てくる「柔和な人は幸いなり」のキーワードが、城山さんの女性の理想なのでしょうか。女性は、良妻賢母であることが最良と考えることは時代遅れと思われますが、良妻賢母であり、さらに、社会参加してサクセスを求めることは、女性自身にとっても、何らかの犠牲が伴うことでしょう。それは、女性自身が考えることでもあるでしょうが、働き手であり、夫であり、父親である男も一緒に考える必要があることなのでしょう。
城山さんが、素子を通じて、男が、妻であり母親である女性の充実した人生を考えることを求めた小説だと思います。