「無所属の時間で生きる」

無所属の時間

「無所属の時間で生きる」
城山三郎
新潮文庫
平成20年4月1日発行
438円

昨夜は、東京に単身赴任しているMくんが、本社転勤のため神戸に業務引き継ぎに来ていたので、彼の御苦労さんの慰労の目的で、会社の近くの「Mごろう」において22時頃まで歓談する。その後、彼は岡山が自宅であるにもかかわらず、新大阪に泊って、引っ越し準備があるので東京に戻るという妙な事を言って、さらに、時間がもう少しあるのでスナックに歌でも歌いに行きましょうと誘ってきた。
仕様がないので、行きつけの「A奈」に連れのSくんが、電話をすると、ママさん曰く「満員だけど、3人ならぎりぎり入れるよ。」との返事。「ママさんが強がり言って満員って言ってるけど、そんなわけないよ。」という疑いをかけて、私が、再度、「もしもし、1人だけど入れるかな?」と電話をしてみると、何と「ごめんなさい。満席です。」「それじゃ、仕方ないね。」ということで、「A奈」があろうことか満席であるという事実を確認する。
「カラン」という音とともに扉を開けると、今まで見たことのない光景が広がりで、カウンターもボックスも、ほんとにお客さんで満員です。しかも、常連のTさん、Mさんがにんまりとこちらを見ているし、馴染みのKさんが、「久し振り」と握手を求めて来るしの大繁盛の盛況さです。ママさんは、「いじわるしたでしょう。」とこちらを睨み、「いや、いや、そこで偶然会っただけ!」と苦し云い訳をしながら、よくみると席が1つ足りない状況。Mさんが腰が痛いから立ってるなんって言って、そんな状況の中にどうにか突入。
歌を歌うどころではないが、どうにか、Mくんに2曲ほど歌を歌わせて、「おい、おい、新大阪の終電の時間だよ。」と、とにかく、主賓を見送る。そのあとが、本日のメインイベントとなった。他のお客さんも、そぞろ引き上げだすと、Tさん、Mさん VS 私とSくんの歌合戦です。今どきのカラオケは、点数が表示されますので、2人の平均点が85点にニアピンの方が勝ちとのルールを定め、戦うこと5回戦、戦績は、2勝2敗1分というイーブンでした。
話を「無所属の時間で生きる」に戻します。城山さんの随筆です。作家の随筆は、その作家の作品の裏話やその作家の私生活、内面を知ることにより、また、その作家の作品を読む時に深みを感じます。城山さんは、戦後最大の財界人石坂泰三が主人公の小説の「もう、君には頼まない」の中で「無所属の時間」を過ごすことの大切さを確認しています。この随筆にも「無所属の時間とは、人間を人間としてよみがえらせ、より大きく育て上げる時間ということではないだろうか。」と問いかけています。作家は、元々、無所属の時間を多く持っているが、その不安も吐露しています。
私の「無所属の時間」は、まだ、10年後になるかもしれませんが、その間にも、「無所属の時間」という立ち止まる時間が必要であることを私自身が、確認することができた人生の生き方を示す随筆です。