「正しさを貫く −私の考える仕事と経営−」

正しさを貫く

「正しさを貫く −私の考える仕事と経営−」
飯田 亮
PHP
2007年10月10日発行
1,600円(神戸市立図書館)

飯田亮(イイダ マコト)さんは、日本警備保障(現在のセコム)の創業者であり、まだ、日本では「水と安全はタダ」という時代にその常識を覆して、1962年に警備専門会社を初めて設立しました。
飯田さんは、酒類問屋の5男として昭和8年に生まれ、湘南中学、高校から学習院大学を経て、実家である酒類問屋に就職しました。その後、起業の志を強く抱き、どんな商売を起業するか、悩んだ末、ある時、友人からヨーロッパには警備を専門とする会社があるということを聞いて、すぐに、日本にない業態であることから、今でいえば、ベンチャー企業として、日本警備保障を設立したそうです。
設立当時は、一般の企業では、門番や宿直などは、すべて、会社の正規社員が従事しており、会社の安全、警備を他者に任せるという考え方はなかったようです。したがって、起業から数年は、大変なご苦労があったようです。
会社にとっての転機は、東京オリンピックと「ザ・ガードマン」のヒットだそうです。イベントは、短期の仕事ですが、これにより、世の中に警備という仕事をPRすることができたこと、また、テレビドラマの「ザ・ガードマン」のヒットで、警備の仕事を世の中に認知してもらうことができたことです。この転機以後、契約件数は飛躍的に増加したそうです。
次に、会社を発展させたのは、従来の巡回警備の方式から機械警備の方式に切り替えたことです。今では、当たり前のことですが、防犯システムの開発により、人手の必要な巡回警備から中央制御室とクライアントを通信回線で結ぶことにより、異常時にのみ派出するという遠隔監視方式に切り替えたことです。そして、長嶋茂雄のコマーシャルの「セコムしてますか。」で、顧客は企業から一般家庭へと拡大していきました。
本書は、このように、起業から、常に、会社を発展させるために、変革を求め、それを実現させていった飯田さんの企業哲学を凝縮させたものです。本書は3部の構成となっており、「第1部 成功のための原点」、「第2部 成功の途上で」「第3部 私の履歴書日経新聞掲載)」です。第1部、2部ともに1タイトルで2ページ程度なので、軽快に読み進むことができます。
私の感銘したタイトルを少し紹介します。「良い人材は良い人格のこと」「拙速でもスピードが大事」「仕事の前に「人間としての基本」」「会議は短いほどいい」「狂であれ、ただし艶っぽく」「心配性で未来を拓く」「リーダーシップの源泉は責任を回避しないこと」「リーダーは卑しくてはならない」「艶っぽさのある社員と会社でありたい」などなど、この場ではとても紹介しきれませんが、最後に、「困難という泥水をたくさん飲んでこそ、人は成長する。」