「一生懸命って素敵なことよ」

一生懸命って素敵なことよ

「一生懸命って素敵なことよ」
 林 文子
 草思社
 2006年1月20日発行
 1200円(神戸市立図書館)

林文子さんは、この本を書いた当時、株式会社ダイエー代表取締役会長兼CEOでした。彼女が、何故、その職についたのか?彼女の経歴からすると、その経緯(イキサツ)に、興味があります。
林文子さんの略歴は、次のとおりです。

『1964年東京都生まれ。東京都立青山高校卒。東レ、松下電気勤務など7つの職場を転々とした後、77年ホンダ販売店勤務。トップセールスとなる。87年BMWに転職。ここでも、担当支店を最優秀支店に導く。99年フォルクスワーゲンに転職。直営店ファーレン東京(株)代表取締役社長として売り上げを倍増。03年BMW東京(株)代表取締役社長。05年(株)ダイエー代表取締役会長兼CEO就任』

当時、ダイエーは、1兆円の負債を抱え、会社全体の窮境状態は深刻でした。経営陣は、財務処理に懸命、しかし、現場の日々の販売は以前と変わりはない。変わっているのは、財務処理に手をとられ大胆な販売施策を打てないこと、設備も老朽化して、投資も出来ない状態であることでした。要するに、経営と現場に大きな乖離が発生しているということです。
この状態は、おそらく、経営不振に陥る企業の多くが経験していることだと思います。林さんは、高校卒業後、「結婚退職」を前提としたOLとして、就職しましたが、やがて、そのことに飽き足らず、当時の女性としては、珍しい「車の販売」の世界に飛び込みました。そして、彼女の独特な販売の努力により、トップセールスになっていきました。
やがて、セールスの手腕は、経営の担い手として期待され、支店を任されるようになり、やがて、会社を任されるようになったのです。その原点は、トップセールスになったことだと思います。彼女自身は、トップセールスになった理由は、「人が好き」だからと言っています。これは、素晴らしいことだと思います。経営も同じでしょう。まずは、企業は、「人」です。その企業を、牽引する社長、部長、課長、係長、社員それぞれが、「人が好き」であることが、大切な理念だと思います。
「人が好き」でなくては、お客様との対話も成り立ちませんし、社内のコミュニケーションは、図れません。多くの著名な経営者が、経営の理念について、多くを語っていますが、私は、林文子さんの「人が好き」であることが最も大事な理念でありキーワードだと思います。

『経営の要点は“人”である』

話は変わりますが、この本を読んで思い出したのは、昨年4月頃のNHK土曜ドラマです。題名は「トップセールス」。主役は、夏川結衣さんでした。「車を売ることは、乗る人の未来を一緒に作ること・・・!」この林文子さんがモデルだったのです。