「楽隊のうさぎ」

うさぎ

「楽隊のうさぎ」
 中沢 けい
 新潮文庫
 平成15年1月1日発行
 514円

いったいどうなっているのでしょうか?25度を超える「夏日」の日があるかと思えば、一転、東北の八甲田山では、5月の降雪に見舞われたそうです。今年は、3年日記の天気の欄が、異常な気象であることを記すことが多いようです。例年に比べて、花粉症は軽くて済んだのも、天候の影響かもしれません。このことは、まことにありがたいことだと思いますが、この天候で、農作物など様々な影響が出ているようです。
政治の世界では、普天間基地の移転問題、高速道路の割引き問題、政治とカネの問題などなど鳩山政権は支持率20%を切ってしまうという悲惨な状況です。それにもかかわらず、鳩山総理の能天気な記者会見は、やはり「宇宙人」なのでしょうか?6月16日には、はやくも通常国会の会期末を迎えます。7月には参議院選挙。私たち国民は、どの政党に投票すればいいのでしょうか?政治をウオッチすることで、1億総政治評論家みたいですが、民主党の最大の功績は、国民の目を政治に向けさせたことかもしれません。

『花の木公園にはうさぎが棲んでいる。克久がうさぎを見つけたのは、小学校の卒業式が終わって間もなくだった。寒いどんより雲った午後だ。うさぎはまだ茶色い草の中で丸い目をして動かなかった。静かに、ほんとうに静かに草の中で背を丸めていた。
 小学校を卒業した少年が、中学校の入学式にのぞむまで、たった二週間である。その二週間がどのくらい奇妙な時間であるか、想像がつくだろうか?時間のちょっとしたエアポケットがそこにある。』

克久は、中学校に入学して、ブラスバンド部に入部します。私の頃は、男の子は、野球部、バレー部、バスケット部が人気クラブでしたが、私は、ちょっと地味な陸上部に入部しました。今は、サッカー部、テニス部などが人気のようですが、どちらかというと、おとなしい部類の克久ですが、何となく、引っ張られるようにして、ブラスバンド部を選んでしまったのです。
担当する楽器はテインパニーですが、打楽器の一種で、あまり人気のない楽器だったので、そうなってしまいました。そりゃそうでしょう。人気なのは、トランペットやフルートなどでしょう。それが、克久のキャラクターなのです。それでも、ブラスバンド部は全国大会を目指します。しかも、楽曲は「シバの女王」。何と、メインは、テインパニー。さあ、克久の懸命な頑張りが始まります。戸惑いながら、迷いながら、励まされながら・・・。

『どうして、あんなにのんきなうさぎが棲みついてしまったのだろう。博多のワハハおじさんに会ってからだ。ベンちゃんにかなり強い口調でものを言われても、裃を着たうさぎは平気で歌を歌っている。時には、わざとかしこまって平身低頭していたりする。克久自身でさえ、理解しがたいうさぎの朗らかさで、うさぎが平身低頭すると、胸のうさぎの飼い主である克久も、ちゃあんと謝るのだが、謝っているという感じがしなかった。』

ほんとうは、うさぎが棲んでいたのは花の木公園ではなく、克久の胸の中でした。思春期にさしかかる子供のこころの動き、そんな多惑な時代を忘れていませんか?この小説は、親と子と、先生と友達の感動の物語です。