「4TEEN(フォーティーン)」

tetu-eng2010-09-12

「4TEEN(フォーティーン)」
石田 衣良
新潮文庫
平成22年6月10日十四刷(平成17年12月1日発行)
476円

石田衣良さんの小説を読むのは、今、テレビドラマで放映中の「美丘」の原作本以来です。「美丘」の主役は、若手で人気の吉高由里子。主題歌は、これも「龍馬伝」で新境地を開いた福山雅治の「蛍」。これで、視聴率が上がらないわけはないと思ったら、そうでもないようです。最近は、ドラマ離れかも。代わって、テレビは、政治番組、ニュース番組が花形のようです。実は、私も見ていません。何故って、ドラマが小説のストーリーと同じであれば、とても、悲しくて、かわいそうで、涙を流さずには観ていられないと思ったからです。
この小説は、「美丘」とは、ジャンルが全く違います。石田さんのヒット作「池袋ウェストパーク」シリーズの中学生版ってところでしょうか。石田さんの「あとがき」によると、そんなに力を入れて書いたわけでもなく、ロケーションは自宅のある月島を舞台にして、主役たちは自分の一番楽しかった中学生2年生として、思うがままにお気楽に書いたそうです。でも、この小説が、直木賞を受賞しました。ほんとうに、えっ、受賞しちゃたって感じだったそうです。

『始まりは春休みにはいったがかりの月曜日。ぼくは月島駅の階段をのぼったところにあるマクドナルドのまえにいた。もんじゃ焼きの店が百軒はある西仲通りのほうの出口だ。マウンテンバイクにのったまま片足をガードレールにかけたり、ときどきはその足もはずしてスタンデイングステイルの練習をしたりしながら、クラスの友達を待った。』

主役は、四人の中学2年生。ぼくは、ごく普通の中学生の「テツロー」。「ジュン」は、優等生なので、大人の信用抜群。太っちょで、ちょっと、家庭に恵まれない「ダイ」。早期老化症候群という難病に罹患して白髪頭の「ナオト」。この四人組が、マウンテンバイクとママチャリ(これは、「ダイ」)に乗って、月島を走り回ります。子供と大人の狭間の年代であり、大人から策縛されているが、一方では、社会から自由奔放な彼ら四人組は、昔の自分を思い出させてしまいます。

『「ぼくが怖いのは、変わることだ。みんなが変わってしまって、今日ここにこうして四人でいるときの気もちを、いつか忘れてしまうことなんだ。ぼくたちはみんな年を取り、大人になっていくだろう。世のなかにでて、あれこれねじ曲げられて、こうしていることをバカにするときがくるかもしれない。あれは中学生の遊びだった、なにも知らないガキだった。でも、そんなときこそ、今の気もちを思いだそう。変わっていいことがあれば、変わらないほうがいいことだってある。」』

でも、自分が中学生の頃、彼らほど、今を生きている自分のこと、将来の自分のこと、について、悩み、考えたことってあったでしょうか。きっと、そうだったんでしょうが、大人になっていくに時間になかで、また、新しい事柄に、悩み、考えてしまい、中学生の頃のことなど、忘れてしまっているのでしょう。夏は、白い開襟シャツに、学生ズボン。靴は、バッシュ(バスケットシューズ)。頭は、坊主頭に白い布を当てた学生帽。かばんは、雑嚢(ざつのう)を肩から抱えて、砂利道を走っていた自分は、この四人組と恰好は、随分と違いますが、きっと、心の中は、そんなに違ってなかったと思います。