「ぼんくら(下)」

tetu-eng2011-12-04

「ぼんくら(下)」
宮部 みゆき
講談社文庫
2004年4月15日第1刷発行
2011年9月12日第35刷発行
620円

先週の土曜日のとこです。田舎で一人暮らしの母親が、病院を転院したので、お見舞いを兼ねて、日帰りで様子を見にいきました。夜、帰宅すると、相棒のダックスフンドが腰を抜かして、ブルブル震えていました。こりゃ、大変。すぐに、夜間診療をしている動物病院に連れていったのが24時前。若い獣医さんでしたが、親切に診察していただきました。病名は、「椎間板ヘルニア」の5段階ランクの2〜3とのことでした。痛み止めの注射などの応急処置を施していただき、翌日、再度、病院へ。すると、即、入院。このまま、良化しなければ、手術の可能性も、ということでした。幸い、神経の消失は免れたようなので、内科的治療のみで金曜日には、退院して、5日ぶりに我が家に帰宅。しかし、後ろ足が不自由で、10歩ほど歩くのが精一杯。痛々しい姿ですが、これからは、飼い主様の愛情でリハビリをしながら治すことになります。
「ぼんくら(上)」を読んだ時は、この小説は短編だと思っていましたが、それぞれの短編と思っていた事件は、すべて、「ぼんくら(下)」の「長い影」に繋がっていました。作者にシテヤラレタような気持ちです。マンマとハマってしまいました。

『湊屋の女主人おふじは、十七年も前に彼女の前から姿を消したきり、ずっと消息の知れない葵という女を、今でも当時そのままのみずみずしい気分で憎んでいるらしい。何でまたそんなことになっているんだろうと不審に思うと同時に、平四郎は感心する。おふじの根性は大したものだ、そうは思わねえかー
 というようなことを、座敷のなかの涼しい場所を探してゴロゴロと寝転がりながら、平四郎は弓之助に話して聞かせていた。』

井筒平四郎は、八丁堀同心です。弓之助は、十二になる平四郎の細君の姉の子供、平四郎の甥になります。平四郎には、子供がいないので、細君は、ゆくゆく弓之助を養子に迎えるつもりです。平四郎も、そのことに異論はないようです。平四郎の見回りの管轄の鉄瓶長屋で起こった殺人事件。その事件に端を発して、鉄瓶長屋で起こる様々な事柄。鉄瓶長屋から、住人が、何故か、引っ越して行きます。その裏に、鉄瓶長屋のオーナーである湊屋の影がちらほら。何故、湊屋は、自分の長屋の住人を手間暇かけて、立ち退かせようとしているのか?そのことが、気にかかる平四郎でした。そのうちに、またまた、殺人事件が起こります。殺害された正次郎は、先の殺人事件の下手人と思われていました。謎が深まります。

『「何でも計るってーー」
 平四郎が言いかけると、弓之助は楽しげに、歌うような口つきで応じた。
「伯父上さまの眉毛と眉毛のあいだはちょうど五分ございますね。右の眉毛は八分に髪の毛一筋ほど余りますが、左の眉毛は九分ございます。右の下まぶたから三寸二分下に黒子がございまして、その黒子の径は一分にわずかに足りません」
 平四郎が目を剥くと、すかさず続けた。
「伯父上さまの目の玉の径は七分ほどのように見受けられます」
 細君が、身を折って笑い出した。』

謎解きに、平四郎と弓之助が、コンビで推理しますが、弓之助は、名探偵コナンのように平四郎を驚かすような推理を展開します。痛快時代劇ミステリーでした。