「戸村飯店 青春100連発」

tetu-eng2011-12-25

「戸村飯店 青春100連発」
瀬尾 まいこ
理論社
2008年3月発行
1500円(神戸市立西図書館)

クリスマスと言えば、子供が中学生の頃までは、一大イベントでしたが、子供が巣立ってしまうと、何とも、世間が騒がしいだけで、面白くも可笑しくもない1年のうちの1日という意味しかありません。東京に居る息子は、イブはクリスマスパーテーに出掛けるそうなので、若い人にとっては、楽しい日なのでしょう。ひがみっぽくなるのは歳の所為でしょうか?そんな私は、イブイブの日は、テニスのスクールの仲間との忘年会。コーチもご招待したところ、そのコーチがサンタさんになってくれて、テニススクールからクリスマスプレゼントを頂いて、やや相好を崩しています。やっぱ、クリスマスもいいねえ。

『ラブレターを代筆するという話はよくある。高校一年生のときの英語の教科書にも、ラブレターを代筆していた郵便配達のおっさんが、送り先の女の人のハートを射止めたという話が載っていた。結構、ポピュラーなことなのかもしれない。でも、身内に書くってのはどうだろう。しかも、あの兄貴に。』

戸村ヘイスケとコウスケは、一つ違いの兄弟。家は、戸村飯店という中華料理屋を営んでいます。戸村飯店の場所は、大阪のどこだかは判りませんが、住之江の地名が出てくるので、その付近なのでしょうか?ラーメンやチャーハンが主なメニューの超庶民的なさえない店だけど、安くておいしいからそこそこはやっているようです。お話は、ヘイスケが高校卒業の前、コウスケは、高校二年生の春の頃から始まります。ヘイスケは、高校卒業後、東京へ出て、表向きは小説家を目指し、ヘイスケは、まだ、目標は定かではありませんが、何となく、家業を継ぐことになりそうです。

『こうなった今、俺が店を継ぐのは仕方がないことだと思っている。いや、もっと前から店を継ぐのは兄貴ではなく俺だと感じていた。
「ほんまは先に生まれた奴が責任持たなあかんちゃうんか?」
「先に出て行けるのって長男の特権やん。一つくらい特権あらへんと、長男なんかやってられへん」
「そやったら、次男の特権はどこにあるねん」
「なんでや。大きな特権があるやん。先を見て学べる。それこそが次男の特権や」
「お前見て学ぶことなんか、一つもあらへんわ」
「俺が成功したらまねしたらええし、俺が失敗したら違うやり方をしたらええ。なんとも楽チンやん。ほんまコウスケがうらやましいわ。俺も兄貴が欲しいねん」
「ぼけたれ!』

こんなことをやり合っている兄弟ですが、兄弟は、それぞれの道を歩み始めます。彼ら二人の青春の一ページを笑いあり、涙?ありの吉本的なタッチで描いています。特に、関西弁満載のやり取りには、何となく、関西人?としては、親近感を感じてしまいます。東京暮らしが、長かった私ですが、そろそろ、関西人になったのでしょうか?瀬尾まいこさんが、こんな小説を書くとは意外でしたが、小説家という人種は、つくづく、クリエーターであると感じます。当たり前ですが、これは、アイロニーではありません。