「ワーキングガール・ウオーズ」

tetu-eng2012-01-09

ワーキングガール・ウオーズ」
柴田 よしき
新潮社
平成19年4月1日発行
平成23年6月10日第20刷発行
580円

『お局様、なんて言葉は、もうとっくに死語なのかも知れない。今はあたしみたいな存在を、巷では何と呼ぶんだろう?
 たまたま人事異動がないままひとつの部署に長くいて、その部署の歴史と共に細かな事柄をすべて知っている。何を聞いても答えが返ってくる。どんなことでもいちばん楽なやり方を知っている。対外的にも顔が広い。だから便利。便利だが、うざったい。おだててごますって必要な時は使うが、遊びには呼ばない。仲間には入れない。誘ったってどうせ断るだろうし。煙たいがいなくなられると困る気がする。・・・・・それがあたし。』

一人称は、「わたし」か「あたし」か?「あたし」は、(ワタシの転)一人称のくだけた言い方で、主に女性に用いる語。正確には、「わたし」ですが、この小説では、「あたし」です。読み始めて、最初に、気になったのが、この1人称ですが、柴田さんは、小説の雰囲気を軽くするために、敢えて、「あたし」を使ったのでしょう。そんな、些細なことを考えながら、この小説を読み始めたのが昨年ですから、年越しの読書になりました。
 墨田翔子。三十七歳。未婚。入社十四年と十カ月。大手総合音楽企業の本社勤務、企画部第二企画課。係長。お局様というよりは、バリバリのキャリアウーマンという方が適切だと思いますが、翔子さんは、自分のことをお局様と思っているようです。お局様というのは、部または課の庶務係を長く勤めて、万事にわたりシキタリを知っている人で、部長も課長も一目置いているような人でしょう。部長や課長が、入社早々のペイペイの時にお世話になり、きっと、頭が上がらないような人です。

『「神林さん」
 あたしは脊髄反射で意地の悪い声を出していた。
「ちょっと」
 神林麻美。去年の新入社員。露骨にふてくされた顔になる。たった一年で、あたしに対して平然とそういう顔をするようになった。
「なんでしょうか」
ハナから反抗的な声を出す。見下すように、あたしの顔の前、机ギリギリのところに立つ。
「先週出してもらった企画書ね」
「はい」
「金曜日の企画会議にこのまま出すのは無理だと思う。練り直して」
「どこが悪いんですか?」
神林は怒りに満ちた瞳を見開いていた。』

ワーキングガールズ・ウオーズです。会社の中で起こる事件。更衣室にアーミーグリーンのマニキュアがべっとり事件、大切なイラスト原画のシュレッダ―事件、お決まりのセクハラ事件などオフイスでは、学校さながらのイジメが横行します。翔子さんは、そのターゲットなのか?男性には、ちょいと、判らない、オフイスでの女性の世界。まあ、男性も同じかな?そんな、こんなに「あたし」は、「負けないもんね。絶対に。」