「張りこみ姫 ―君たちに明日はない3―」

tetu-eng2012-01-22

「張りこみ姫 ―君たちに明日はない3―」
垣根 涼介
新潮社
2010年1月15日発行
1,500円(神戸市立西図書館)

6日ごろから、どうも、風邪気味でした。3連休は、何だか身体に力が入らず、喉はイガラッポイ感じ、鼻水が出始め、咳がコンコン。10日は、微熱を感じて、ついに、近所の内科医に出掛けて、診察を受け、お薬を貰って、一日中、寝込んでしまいました。昨年、ちょうど、今ごろ、インフルエンザに罹患して、タミフルを処方してもらいましたが、どうも、この季節は、気を付けなければなりません。その風邪が、まだ、抜けきらない様子で、軽い咳と喉で痰が絡む感じが、残っています。今年の風邪は、長引きます。
君たちに明日はない」シリーズの第3段です。村上真介は35歳。「日本ヒューマンリアクト(株)従業員30名程度の企業のリストラ策の退職勧奨を請け負う会社の社員です。その会社で、真介は、退職勧奨の面接を担当しています。今回の依頼会社は、「英会話学校」「旅行代理店」「車のデイーラー」そして、「出版会社」です。

『「この日本では労基法で指名解雇は出来ないことになっていますから、この会社に残られる、という意思は、誰にも阻害されるものではありません」
「ですよね」
「ですが、御社のこれからの展望を考えてみるに、もし辞められる意思があなたにおありなら、少しでも早いに越したことはない、とも思っております」
 村上はそのあと、何故そう思うかを説明し始めた。
「今回から始まる御社での人員削減計画は、今後五年間続きます。来期での人員削減では、今ほどの好条件はお出しできないでしょう。まずは、退職金ですが、規定は勤続年数×基本給の一カ月分のところを、さらに一カ月分上乗せするそうです。つまりは倍額ですね。さらには有給休暇の買い取りと、もじ御希望なら、再就職支援会社も会社側の負担でご利用いただけます。オプションとして、退職受け入れの決定日から実際の退職日まで、最大三カ月の完全有給の猶予期間も設けられます。」』

 いい条件を提示しながら、リストラ対象者への面接を行いながら、面接者の退職への希望を盛り上げていくのが真介の仕事です。この小説の主題は、もちろん、リストラの対象となったサラリーマンの様々な人生模様や仕事に対する想いなどの描写ですが、もう一つ、私に参考になることがあります。それは、語学学校の業界の状況、旅行代理店の経営内容、車のメカニックに対するエンジニアの想い、そして、写真週刊誌の取材の実態などを小説家は、調査に調査を重ねて、自らの視点で読者に伝えようとしています。あるいは、このシリーズを通じて、垣根さんが伝えたかったのは、リストラという企業の人員削減策の裏にある企業の実態なのではないでしょうか。そういう意味では、この小説は、企業小説、経済小説のジャンルに入るのかもしれません。

『父親の言葉
(どんな仕事でも、真面目に取り組んでさえいれば、やがては自分だけの何かが見えてくるものだ)
そしてこの前の、村上の返事。
(日常に連なった事実の中にある、真実。たぶんそれは、石ころのようにさりげなく道端に転がっている)』