「ビブリア古書堂の事件手帖」

tetu-eng2012-03-17

ビブリア古書堂の事件手帖
 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜
 〜栞子さんと謎めく日常〜
三上 延
メデイアワークス文庫
2011年3月25日発行
2011年10月25日発行
590円+税、530円+税

メデイアワークス文庫は、初めて、購入しました。アスキーというパソコン系の雑誌がありましたが、その雑誌社と関係があるのか?発行所は、アスキー・メデイアワークスです。表紙のイラストを見ると、ちょっと、違和感を覚えましたが、2012年度の本屋大賞ノミネートの作品なので、手を出しました。読了後の結論、4月10日の本屋大賞の発表が待ち遠しくなりました。私は、この本で決まりだと思います。「もう一度読みたい」「手元に置いておきたい」と思ったのは、「阪急電車」以来です。要するに、「面白い」のです。

『右手に北鎌倉駅のホームが見える。ここのホームは異様に長い。改札口が一方の端にしかないので、延々と歩かなければ構内に入れなかった。
 左手には古い家々が並んでいる。どの家の庭木も大きく育ち、緑を茂らせていた。
 知っている人間はあまりいないだろうし、存在を知っていても意識する者は少ないと思うが――この通りには一軒の古本屋がある。
 年季の入った木造の建物には店名すら表示されていない。軒先には風で回転する古い立看板が出ていて、「古書買取・誠実査定」の文字が躍っている。錆び付いているせいかなかなか動かない。
 その名称不明の店の前を、俺は通りすぎようとしていた。』

 俺は、五浦大輔。大学は卒業したが、未だ、就職活動中である。古本屋は、「ビブリア古書堂」。「ビブリア」とは、ラテン語で「本を愛する人」という意味。俺は、祖母が残した岩波新書版の「漱石全集」の査定を依頼に「ビブリア古書堂」のガラス戸を開けた。「第八巻それから」の表紙の裏には、「夏目漱石 田中嘉雄様へ」のサインがある。ビブリア古書堂の店主は、篠川栞子。彼女は、大船総合病院に入院中だったが、彼女の妹の斡旋で、俺は、彼女を訪ねることになった。

『こぢんまりしているが明るい個室だった。窓際にはリクライニング機能つきのベッドが置かれている。緩く起きあがったマットレスにもたれて、クリーム色のパジャマを着た髪の長い女性が目を閉じていた。
 きっと読書の最中にうたた寝してしまったのだろう。膝の上で開いたままの本に、太いフレームの眼鏡が置かれていた。長い睫毛の下にすっと通った鼻筋。薄い唇が軽く開いている。柔らかい感じの美貌には見覚えがあった。』

 彼女は、「漱石全集」を最初の巻から1冊ずつ、目を輝かせながらページをめくっていった。本をめくるうちに、彼女の唇に笑みが浮かんでいき、下手くそな口笛が加わる。そして、彼女の口から、「漱石全集」に隠された俺の祖母の秘密が解き明かされていった。このあと、俺は、「ビブリア古書堂」のアルバイト店員を依頼されることとなり、本を読むことが苦手な俺と古書の知識が並大抵ではない栞子さんとの奇妙なコンビが、様々な古書にまつわる謎解きをすることとなります。文庫本2巻を、瞬く間に、読了しました。あとがきには、「物語はようやく本編というところ」との作者のコメント。楽しみにしています。