「夜の桃」

tetu-eng2012-04-15

「夜の桃」
石田 衣良
新潮社
2008年5月20日発行
1600円+税(神戸市立西図書館)

図書館では、新刊本は、ほとんど借りることはできません。そこで、私は、返却本の棚を物色しながら、面白そうな本をセレクトしています。予約も可能なのですが、人気のある作家、人気のある本は、なかなか手にすることはできません。そこで、私のセレクトの基準は、本の新しさ、タイトル、作家、そして、ちょい読み。限られた選択肢の中から、まあまあ、読んでみようかなと思う本を、チョイスします。その程度のセレクトのやり方なので、いい加減と言えば、そのとおり。それでも、時には、「へえ〜」という面白い本に当たることもあります。読んだことのない作家で、「うむ」と唸ることもあります。ところが、残念ながら失望した本でも、兎に角、読み切ってしまうというのが、私流でしょうか?途中で、中断することは、余程の「・・・」でないと、まずは、ないのです。
「夜の桃」この本は、作家の石田衣良さんでセレクトしました。石田さんの本は、数冊読みましたが、まあ、これまではハズレはありませんでした。石田さんのことは、Twitterでもフォローしているのでお馴染みさんと言えば、そうですね。ちょっと、エロチックなタイトルなので、どうかな?とは思いました。あまり、エロチックな小説は、好みではありません。どちらかと言うと、いい年をして、恋愛小説でもプラトニックなものを好みます。ところが、この小説、結論から言うと、読み始めて、なんと、なんと、もう1回、なんと、ここでは紹介できないようなセックスシーンの連続です。読んでいて、うんざりしましたが、それでも、最後まで読みきりました。

『ピンクの桃が、夜の路上に浮かんでいた。
 六本木の裏通りである。ネオンを仕込んだ看板がアスファルトをぼんやり照らしていた。淡い桃色のシルエットには、白抜きの英文字でEAT A PEACHと抜かれていた。
 (「桃をくえ」なんて、ふざけた名前だ)
 奥山雅人は自分が名をつけた店の看板を眺め、ひとりでにやりとした。懐かしのサザンロック。オールマンブラザーズバンドの傑作アルバムから拝借したものだ。』

奥山雅人は、四十五歳。ネット広告のプロダクションを立ち上げ、成功。いわゆるベンチャー企業の経営者です。神宮前に瀟洒な一軒屋を所有し、妻比沙子との間には子供は出来なかったが、夫婦二人の生活に不満はありませんでした。にも係わらず、彼には、以前勤めていた広告代理店で同僚だった麻衣佳という愛人との別の夜の生活があります。奥山は、仕事も、家庭も、そして夜の生活にも満足していました。そこに、20歳年下の千映という女性が登場。奥山は、千映に心が傾き、ついに、妻と愛人そして千映との夜の生活が激しさを増します。
3人の女性を操り、仕事も軌道の乗り、男としての絶頂を謳歌しているように見えた奥山ですが、こんな調子のいい話ってないでしょう。当然の筋書きとして、奥山は、破滅の道へ・・・。これじゃ、在り来たりのストリーですね。まあ、はっきり言って、駄作ですが、唯一、感心したのは、セックスシーンが、案外と、スッキリした感じで、あまり嫌悪感を感じなかったのは、石田衣良の作風でしょうか?「4TEEN」「6TEEN」のような青春小説から「眠れぬ真珠」「美丘」のような官能小説まで、守備範囲の広い作家ですが、基本は、「池袋ウェストゲートパーク」「下北サンデーズ」的なコミカルタッチの表現描写を得意としているからしょう。石田さん、そっちの方向性の方が、合ってるんじゃないですか?