「日暮らし」【上・下】

tetu-eng2012-05-20

「日暮らし」【上・下】
宮部みゆき
講談社文庫
2011年9月15日第一刷発行
667円(税別)

金曜日の夜、休日前にも係わらず、何故か「眠れない症候群」。もともと、不眠症に悩まされ、毎夜、寝る前の導入剤が欠かせないのですが、この夜は、どうにも困りました。最近、具合が良かったのですが・・・、ベッドに入って、本を読んで、区切りがいいところで、消灯。何時もならば、消灯後、15分ぐらいで白河夜船。ところが、この夜は、1時半になっても2時半になっても、寝返りばかり、途中、トイレにも2回ほど。そのまま、朝まで起きていればいいのですが、「脛に傷ある身」は、何としても寝ようとします。そこで、さらに、安定剤を服用。すると、ようよう、気がついたのが朝の7時過ぎでしたね。
そんな夜に、読了したのが、「日暮らし」の下巻です。「ぼんくら」(上・下)のシリーズ2作目。御存じかな?八丁堀の定町廻りの同心の井筒平四郎の登場です。平四郎を取り巻くキャストは、平四郎の甥っ子(子供のいない平四郎は、養子にと思っている。)の弓之助。平四郎の中間の小平次。煮売り屋のお徳。岡っ引きの政五郎。政五郎の手下の「おでこ」などなど。今回の事件は、佐吉が、生みの親の葵を殺めた疑いで自身番にしょっ引かれた。平四郎は、佐吉と、因縁浅からぬ関係です。佐吉が葵殺しの下手人とは、信じられません。

『佐吉が人を殺めた疑いを受け、芋洗坂の自身番に身柄を囚われている。それだけでも腰を抜かすほどの驚きである。しかもその上に、殺した相手があの葵だという。さらなるびっくり仰天が乗っかっているのだ。誰も平然とはしていられなくて当然だ。
葵は佐吉の実の母親である。築地の俵物問屋の主人、湊屋総右衛門の姪でもある。葵はその昔幼かった佐吉を連れて、湊屋の世話になっていた時期があった。総右衛門は自分の妻子をさしおいて葵と佐吉をめろめろに可愛がり、それが総右衛門の妻おふじの逆鱗に触れて湊屋では実に厄介な出来事が起こった。』

「ぼんくら同心」の平四郎が、お役目違いのこの事件に、乗り出します。もちろん、相方は、甥っ子の弓之助。いつものコンビ。もう少し、ご紹介しますが、弓之助は、まだ、10歳の子供ですが、その頭脳は明晰、いわゆる「江戸時代版のコナン」です。平四郎は、湊屋の過去の厄介な出来事が、葵殺しの裏側に潜んでいると推理しますが、弓之助の推理は、まったく別の方向に向かっていきます。ただ、弓之助は、その方向が漠然とし過ぎていて、確証が得られません。事件の真相は、どこにあるのか?時代劇ミステリー。前作「ぼんくら」に続いて面白い。もちろん、次は、シリーズ第3弾の「おまえさん」に続きます。ただ、宮部さんに、少し、苦情を言えば、物語の核心から逸れる話が多すぎて、小説が間延びしています。平四郎と弓之助のキャラクターがそれを補っていますが、もう少し、シンプルな筋書きの方が、小説全体が軽くなると思のですが、読者の感想です。

『弓之助のおつむりの働きというのは特別なので、好きなようにやらせておいても無駄は出ない。平四郎はそれをよく知っている。
「先に申し上げましたが、叔父上」
と、弓之助は膝を揃えて真顔に戻る。
「わたくしは、葵さんの一件が、とてもさっぱりとしていることがやはり気になるのです。あるいはこの殺しは、とんでもない掛け違いとか、はずみで起こったことなのではないかと思えてなりません。今はまだ上手く言えないのですが・・・」』