お伊勢参りに行ってきました。内宮前のおはらい町の通りと「おかげ横丁」の賑わいにビックリです。「おかげ横丁」は、江戸時代のお茶屋さんをイメージしたテーマパークですね。26年前に訪れた時は「赤福」しかなかったのに、お伊勢さんの荘厳さがかき消されるようです。それでも五十鈴川の川べりの落ち着いた喫茶店もあり、落ち着いた雰囲気もあります。
「ビブリア古書堂の事件手帖 3 〜栞子さんと消えない虹〜」
三上 延
メデイアワークス文庫
2012年6月23日初版発行
550円(税別)
2012年本屋大賞は逃しましたが、確実にベストセラー。ビブリア古書堂のシリーズ第3弾です。読者とのお約束どおり、6月下旬に発行されました。第3弾を読み終えたばかりで、次巻のお話をするのもおかしな話ですが、「あとがき」に予告の掲載がありました。
『四巻で取り上げる作家はもう決まっており、三巻の執筆と並行して資料も読んでいました。調べれば調べるほど興味深い話ばかりで、知り得たことを全部盛込めないのが残念です。
たぶん冬ぐらいには出せるはずです。
よろしければ次巻もお付き合い下さい。』
今回の古書は、プロローグとエピローグが、「王さまのみみはロバのみみ」(ポプラ社)。第一話は、ロバート・F・キング「たんぽぽ娘」(集英社文庫)。第二話は、エドウアルド・ウスペンスキー「チェブラーシェカとなかまたち」(新読書社)。そして、第三話は、宮澤賢治「春と修羅」(関根書店)。さて、またまた、俺ことビブリア古書堂の五浦大輔と店主の篠川栞子(しのかわしおりこ)が、古書にまつわる謎解きに迫ります。
『「あの・・・は、本日のご用の向きは、どういったことでしょうか・・・・」
栞子さんが尋ねる。
「この部屋から盗まれた本を、取り返して欲しいの」
俺たちは書斎のある客間に移動し、畳に置かれた年代物の応接セットに向かい合って座った。
「詳しく話す前に、この本を見て欲しいの・・・お二人は、ご存知よね」
山岡聡子はパラフィン紙に包まれた函入りの古い本をテーブルに置いた。栞子さんがきらりと目を輝かせたが、隣にいる俺はもちろんご存じではなかった。』
大正十三年刊行の宮澤賢治の「春と修羅」の初版本が書斎から盗まれた。亡父から書斎の蔵書を相続した山岡聡子は、栞子に盗まれた本を取り返して欲しいと依頼したのです。この本が消えた日に、聡子の兄夫婦が蔵書の処分ことで来ていて、そのことで揉めたということで、聡子は、兄夫婦が、この本を持ち出したと思っています。ところが、この「春と修羅」を巡って、思わぬ経緯(いきさつ)が隠されていました。俺と栞子さんは、関係者から話を聞きながら、栞子さんの推理が始まります。もちろん、この「春と修羅」という古書に係わる秘密が解きほぐされていきます。
『「春と修羅」から「永訣の朝」
「けふのうちにとほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ」で始まる、妹の死について書いた有名な詩の一節。
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになって
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ 』