「珈琲店タレーランの事件簿」

tetu-eng2012-12-02

珈琲店タレーランの事件簿
岡崎 琢磨
宝島社文庫
2012年9月20日第3刷
648円(税別)

第10回「このミステリーがすごい!」大賞、略して「このミス大賞」の隠し玉として出版。「隠し玉」とは、大賞には至らなかったが、最終選考に残った作品として、編集部から高い評価を受けた作品であるということです。「このミス大賞」では、何と言っても、海堂尊さんの「チームバチスタの栄光」。これは、大ヒット作です。この本の著者の岡崎さんは、この作品が、デビュー作だそうです。これも、ヒットするかな?

『良いコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い。シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール<フランス、1754-1838>』

 「珈琲店タレーラン」の「タレーラン」とは、フランス革命期、主として外交に辣腕をふるい、かのナポレオン皇帝も一目置いたとされる偉大な政治家。実在の歴史上の人物です。欧州諸国では、珈琲と言えばほとんどの場合、日本で広く飲まれるドリップコーヒーではなくエスプレッソを指し、タレーラン伯爵の言う甘さの正体は、エスプレッソに溶かした砂糖とのことです。

 そもそも、コーヒーは、大きく分けて、その抽出方法により、ドリップ方式とエスプレッソ方式があります。ドリップ方式は、浅煎り焙煎したコーヒー豆を挽いて、ドリップにお湯を注いで抽出します。これに、牛乳を入れたのがカフェ・オ・レです。エスプレッソ方式は、深煎り焙煎したコーヒー豆を挽いて、エスプッレソマシンで高圧・短時間で抽出します。このエスプレッソには、牛乳を入れたカフェラッテ、泡立て牛乳を入れたカプチーノ、少量の泡立て牛乳を入れたカフェ・マキアートなどの種類があります。両方の方式でコーヒーを楽しみたい方は、両方の方式で抽出することができるコーヒーメーカーが1万円弱で販売されています。休日の午後のひととき、ご自宅で、カプチーノをお楽しみいただけます。

 私、若い時は、無類のコーヒー好き。特に、学生時代は、三島では、寿楽園の「欅」(コーヒー80円)、東京では、水道橋の「青い鳥」(コーヒー120円)。自宅では、ジャマイカモカ、ブルマンの独自ブレンドの豆を「コリコリ」とコーヒーミルで挽いて、ドリップ方式で楽しんでいましたが、最近は、無精になりました。でも、コーヒーって、生活習慣病中性脂肪)の改善に効能があるそうです。また、「コリコリ」を再開しましょうか?

 話が、とんでもない方向に行ってしまいました。主人公は、切間美星(きりまみほし)<キリマンジェロをもじった名前>。彼女、可憐で少女のようなバリスタの入れるコーヒーは、

『 唇から注ぎ込んだ瞬間、鼻腔にふんわりと広がる香ばしさ、次いで感じたのは、そっと舌をなでるような甘味だった。丹念に炒られた豆だけが生み出せる絶妙な清涼感が、刺々しくなりがちな後味を上手にフェードアウトさせている。
 間違いない。これぞまさしく、かの至言の中に夢見てきた味。
 長らく僕が探し求めてきた、理想ともいうべきコーヒーの味。
 やっと、出会えたのだ。』

 僕は、青山真<ブルーマウンテンをもじった名前>。京都の富小路通二条通の交差点を少し過ぎたあたりの「純喫茶 タレーラン」を舞台に繰り広げられる「ちょっとした事件」。バリスタ美星は、謎解きがお得意です。謎を解くとき、コーヒーミルのハンドルを回しながら、「コリコリ」とリズミカルな音をたてながら、謎が解けると「大変よく挽けました」の一言。サブタイトルは、『また会えたたなら、あなたの淹れた珈琲を』です。