「神去なあなあ日常」

tetu-eng2012-12-23

神去なあなあ日常
三浦 しをん
徳間文庫
2012年9月15日初版
619円(税別)

この小説の舞台となっている「神去村」ってどこでしょうか?実在するのでしょうか?と、思って「神去村」検索してみると、「三重の環境と森林」メルマガ9月号の記事がヒットしました。その記事を読むと、「神去村」が静かな旋風をまきこしているようです。職員が綴る「ちょこっと日記」という小記事でも取り上げていました。その記事によると、
三浦しをん著「神去なあなあ日常」に登場する神去村の舞台は、三重県の中勢区域を流れる雲出川を上流へと遡っていった旧美杉村です。三浦さんのおじいさまが美杉村出身であるという繋がりで三浦さんは山深い当県までお越しになったことがあるそうです。
 「神去なあなあ日常」は、林業を営みながら「なあなあ」という言葉を大らかに話す村人たちと若者が巻き起こす日常を、コミカルなタッチで書き上げた青春林業小説で、三浦さんらしく軽快に仕上がっています。』

 と言うことで、「神去なあなあ日常」の紹介が終わってしまいました。

『高校を出たら、まあ適当にフリーターで食っていこうと思っていた。
 ところが、卒業式を終えて教室に戻ったとたん、担任の熊やん(熊谷先生)が言った。
 「おう、平野。先生が就職先を決めてきてやったぞ」
 だれもそんなこと頼んでない。「はあ?」「なんだそれ、冗談じゃなねえよ」って
 そしてほんとうに冗談じゃなかったんだ。
 熊やんに引きずられて家まで帰ると、母ちゃんはさっそく、
 「着替えや身の回りの品は、神去村に送っておいたから、みなさんの言うことをよく聞いて、頑張るのよ」』

 平野勇気、18歳。こうして、神去村へ行くことになりました。勇気は、林業に就業することを前提に、国が助成金を出している「緑の雇用」制度に勝手に応募されていたのです。研修生を受け入れた森林組合林業会社には、最初の一年間は、研修生一人につき三百万円の助成金が支払われるシステムとのこと。

『神去村の住人には、わりとおっとりしたひとが多い。一番奥まった神去地区のひとたちとなると、なおさらだ。
 彼らの口癖は「なあなあ」で、これはだれかに呼びかけているのでも、なあなあで済ませようと言っているのでもない。「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスだ。』

 携帯が通じない神去村に放り込まれた勇気が、脱走を企てることもありますが、村人たちの「なあなあ」に癒されながら、林業に携わっていく、まさに、『お仕事小説』です。そして、林業エンタテイメント小説でもあり、青春痛快林業小説とも言えます。いろいろなレッテルを付けることができる「とにかく、面白い。」小説です。

 三浦さんの小説は、「まほろ駅前多田便利軒」(2006年直木賞)「仏果を得ず」を読みましたが、いずれも、軽快なタッチの文章で、読みやすく、引き込まれる作品でした。「神去なあなあ日常」も、年末年始のお休みに是非、どうぞ、お薦めです。