「啄木のうた」

tetu-eng2013-02-03

「啄木のうた」
 石川 正雄 編
 現代教養文庫社会思想社
 昭和36年1月30日初版第1刷発行
 昭和42年7月5日初版第37刷発行
 160円

 本箱の整理をしていて見つけました。昭和42年ごろに買った本です。中学生の頃ですから、おおよそ46〜7年前のことでしょうか?何故、この本を買ったのかは、覚えていません。が、この本と、あとは、「茂吉のうた」「牧水のうた」もありました。斉藤茂吉若山牧水です。出版社は、社会思想社。すでに、倒産して出版事業は行っていません。名前からして、社会主義の匂いがしますが。当時は、55年体制の最盛期で、まだ、日本社会党が野党第1党として三宅坂に党本部を構えていたころです。と言って、中学生の私が、思想的な考えで、この本を買うはずはありません。当時、何を考えていたのか?解りませんが、この本の中で、二重丸を付けていた詩がありました。

『ココアのひと匙
 われは知る、テロリストの
 かなしき心を
 言葉とおこなひとを分かちがたき
 ただひとつの心を、
 奪われたる言葉のかほりに
 おこなひをもて語らんとする心を、
 われとわがからだを敵に投げつくる心を
 しかして、そは真面目にして熱心なる人の常
 に有つかなしみなり。
 はてしなき議論の後の
 冷めたるココアのひと匙を啜りて、
 そのうすにがき舌触りに、
 われは知る、テロリストの
 かなしき、かなしき心を。』

 この詩を読みなおしてみて、「あっ」、これは中学生の頃に二重丸をつけたのではなく、おそらく、大学時代につけたのではないかと推理されます。学生運動が下火となった学内で、それでも、まだ、ヘルメットをかぶり、運動を続けていた友人がいました。私たち、ノンポリの学生は、どちらかというと冷めた目で彼らを見ていたものです。

 赤鉛筆で、囲っている歌がありました。これは、何時、囲ったのでしょう。ずいぶんとロマンチックですが・・・。

『君に似し姿を街に見る時の
 こころ踊りを
 あはれと思へ』

 今、啄木を読みなおして、また、違う想いを抱く。人生六十年を経験して、啄木のうたは、心に新鮮な響きをあたえるって、ちょっと、カッコよすぎましたか?