「啄木のうた」
石川 正雄 編
現代教養文庫(社会思想社)
昭和36年1月30日初版第1刷発行
昭和42年7月5日初版第37刷発行
160円
本箱の整理をしていて見つけました。昭和42年ごろに買った本です。中学生の頃ですから、おおよそ46〜7年前のことでしょうか?何故、この本を買ったのかは、覚えていません。が、この本と、あとは、「茂吉のうた」「牧水のうた」もありました。斉藤茂吉と若山牧水です。出版社は、社会思想社。すでに、倒産して出版事業は行っていません。名前からして、社会主義の匂いがしますが。当時は、55年体制の最盛期で、まだ、日本社会党が野党第1党として三宅坂に党本部を構えていたころです。と言って、中学生の私が、思想的な考えで、この本を買うはずはありません。当時、何を考えていたのか?解りませんが、この本の中で、二重丸を付けていた詩がありました。
『ココアのひと匙
われは知る、テロリストの
かなしき心を
言葉とおこなひとを分かちがたき
ただひとつの心を、
奪われたる言葉のかほりに
おこなひをもて語らんとする心を、
われとわがからだを敵に投げつくる心を
しかして、そは真面目にして熱心なる人の常
に有つかなしみなり。
はてしなき議論の後の
冷めたるココアのひと匙を啜りて、
そのうすにがき舌触りに、
われは知る、テロリストの
かなしき、かなしき心を。』
この詩を読みなおしてみて、「あっ」、これは中学生の頃に二重丸をつけたのではなく、おそらく、大学時代につけたのではないかと推理されます。学生運動が下火となった学内で、それでも、まだ、ヘルメットをかぶり、運動を続けていた友人がいました。私たち、ノンポリの学生は、どちらかというと冷めた目で彼らを見ていたものです。
赤鉛筆で、囲っている歌がありました。これは、何時、囲ったのでしょう。ずいぶんとロマンチックですが・・・。
『君に似し姿を街に見る時の
こころ踊りを
あはれと思へ』
今、啄木を読みなおして、また、違う想いを抱く。人生六十年を経験して、啄木のうたは、心に新鮮な響きをあたえるって、ちょっと、カッコよすぎましたか?