「今宵も、ひたすら一生けんめい」

tetu-eng2013-06-30

「今宵も、ひたすら一生けんめい」
 有馬秀子
 ソニー・マガジンズ
 2002年9月20日初版発行
 2003年6月12日第四刷発行
 1300円(税別)

 最近、すっかりバーやスナックに寄り道しなくなりました。毎週金曜日には、「スナックA奈」に行けば、私がいると言われていたほどでしたが、さっぱりです。送別会や懇親会の後も、寄り道することなく、地下鉄の駅に直行します。歳の所為でしょうか?まだ、還暦のお客さんとなるべき人が、へばっているのに、100歳のバーのママさんがいらっしゃたことは驚きですね。それが、有馬秀子さんです。
 有馬秀子さんは、残念ながら2003年9月に101歳でお亡くなりになっているので、この本の初版発行から1年後のことです。この本の発行時には、御年、100歳の銀座のママさんなのです。銀座七丁目コリドー街の一角、「ギルビーA」。「ギルビー」は、洋酒の銘柄、「ギルビーウオッカ」「ギルビージン」などがあるそうです。銀座には、「ギルビー」というお店があったので、「有馬」の「A」をつけて、「ギルビーA」と名付けたそうです。その「ギルビーA」のオーナーが、有馬秀子さんです。なお、今、このお店があるのかは存じ上げません。

『人生にいちばん大切なものとはいったいなんでしょう。
 私は、自分が至らないことを自覚しておりますから、ただただ一生懸命毎日を過ごしてきました。
 今振り返ってしみじみ幸福だったと思うことは、お目にかかった方がみなさん、いい方ばかりだったということです。
 心豊かな人生を送るには、人との出会いがとても重要だと言います。
 いい出会いが、いい人生をつくる。そういう点でも、私はたいへん幸せだったと思います。』

 有馬さんが、戦後すぐの昭和23年に五反田に喫茶店を開業し、昭和26年に銀座に移転するとともに喫茶店からバーに変わってから、50年間、このバーを経営してこられたそうです。このバーのお客さんには、各界の著名な方が多かったようです。この本は、開業から100歳の時までの銀座のママさんの歴史を綴っています。自伝的なエッセーです。

『六十代、七十代の方々は、これからまだまだ人生がおありになります。現代は、長生きの時代ですから、ガンはもちろん、いろいろな病気が怖いだろうと思います。
 私たちの時代の六十代、七十代と違って、今の方々はまだ熟年ですから、これからなにかをしようとおもっていらっしゃる方も多いと思います。そういう方は病気を一番恐れるでしょう。
 でも、そこは不安と闘っていかなければいけません。これは人生ですから、仕方ありません。逃れることはできないでしょう。
 その戦場を通り過ぎたところに、今の私のいる場所がございます。』

 100歳の銀座のママから見れば、還暦なんて、まだまだ、洟垂れ小僧でしょう。洟垂れ小僧は、泣き言を言わないで、闘いなさいって、厳しいお説教でした。こんなお店が、神戸にもあれば、お説教を聞きに行きましょう。今宵も、ひたすら一生けんめいに。