「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」

tetu-eng2013-09-29

「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」
 万城目 学
 角川文庫
 2013年1月25日初版発行
 476円(税別)

 関西は、残暑厳しく、「暑さ寒さも彼岸まで」と言いながら、まだまだ、というお天道様のご意向か、と思いきや、25日(火)から急に気温が低くなり、朝夕は、随分と過ごしやすく、漸く、青息吐息で酷暑の夏を切り抜けたという様子です。そうこう言っていたら、長期予報では、今年の冬は、平年より寒いとのこと。夏暑く、冬寒い、当たり前ですが、程度というものがあります。まあ、お天道様に文句を言って詮無いことなので、このぐらいにしておきます。

 「半沢直樹」が視聴率50%超をたたき出して終了。「あまちゃん」では、アキちゃんが大人気ですが、9月末で終了。「どうにかなるさ」は、舘ひろしのコミカルな演技が面白かった。 10月からも、秋のテレビドラマが面白いことを期待しています。今のところ有望なのは、月9の「海の上の診療所」(松田翔太武井咲(若いころの吉永小百合に似ていませんか?)、水の22時はかぶっていますが、「ダンダリン・労働基準監督官」(竹内結子松坂桃李)、「リーガルハイ」(堺正人・新垣結衣)、木の20時の「科捜研の女」(沢口靖子ちゃん)、金の20時の「雲霧仁左衛門」(池波正太郎の世界、中井貴一)、土の21時の「東京バンドワゴン」(小路幸也のシリーズ小説、亀梨和也多部未華子)ですかネ。一時は、バラエテイーばかりだったのですが、最近は、ドラマが増えているようです。しかも、23時以降の深夜ドラマが・・・・。僕は、22時過ぎると、自室に籠って、就寝までのクールダウンタイムに入るので、ほとんど、土曜・日曜日のビデオ鑑賞になります。

 さて、脇道はこのくらいにして、動物を擬人化した万城目さんの小説は、「鹿男あをによし」以来ですか?テレビドラマにもなりましたが、マドレーヌ夫人はどうでしょうか?「かのこちゃん」は小学校1年生の女の子、「マドレーヌ夫人」は、大雨の日に「かのこちゃん」の家(正確には、玄三郎の家です。玄三郎は、「かのこちゃんの家」の十三歳になる犬。)に逃げ込んできたアカトラの猫。このアカトラに「マドレーヌ」という名前をつけたのは、「かのこちゃん」です。「夫人」と呼ばれる所以は、「マドレーヌ」と「玄三郎」は、夫婦になったからです。

『いつの日から、一匹のメスのアカトラが、その名前に「夫人」と添えて呼ばれるようになったのか、今となっては定かではない。だが、その理由の一つが、「外国語を話すことができる」という点にあったことだけは疑いない。(*外国語とは、犬の言葉)
 もちろん「外国語」だけではなく、人間の言葉を解し、また人間の文字まで読むことができる。ということも同じく賞賛に値する能力だったが、もっとも決してめずらしいことではない。人と暮らすうち文字は駄目でも、話し言葉の半分なら自然と解するようになった。
 だが、犬に関しては別である。
 そもそも猫は、犬の言葉のいっさいが理解できない。』

 ところが、「マドレーヌ夫人」は、「外国語を話すことができる」のです。それが、「玄三郎」と夫婦になった所以でもある。それどころか「マドレーヌ夫人」は、「猫又」だったのです。

『「猫又?」
「おやおや自分たちの話なのにしらないのかい?」
「そんな言葉、聞いたこともない」
「むかしはね、長生きしすぎた猫は尻尾の先が二本になって、人に化けると言われていたんだよ」
「尻尾が分かれるから猫又?嘘よ、そんな猫見たことない」
「もちろん、人間が勝手に作った話だよ。そのせいで、むかしは短い尾の猫が好まれて飼われたんだ。和猫は短尾が多いのは、その名残だよ」
 夫人は首をねじって、自分の尻尾を確かめた。夫人はれっきとした和猫のアカトラだが、その尻尾はひょろりと長い。
「あなたは何でも知っているのね」
「年寄りだからね」
と玄三郎は笑った。』

 この小説のジャンルを何と言ったらいいのだろうか?小学校1年生の「かのこちゃん」の活躍と「マドレーヌ夫人」の冒険。そして、「かのこちゃん」と刎頚の友「すずちゃん」との友情。「マドレーヌ夫人」と「玄三郎」の夫婦愛。「かのこちゃん」のお母さん、お父さんとの親子愛。何だか、身近の「愛」がいっぱい詰まっている「ほのぼの」とした物語です。