尾張国春日井郡清須(現在の愛知県清須市)。ここに、織田信長の居城である清須城がありました。東海道新幹線の岐阜羽島駅方面から名古屋駅に向かう手前の右側に、模擬城として再建された清須城を見ることができるはずですが、どうでしょうか?名古屋や東京へ行くときに、見たことがあるような、ないような?歴史上、有名な「清須会議」は、この清須城が舞台となりました。
天正10年(1582年)6月2日、本能寺において、明智光秀の謀反のため、織田信長が天下統一を目前にして憤死。すでに家督を相続していた信長の嫡子である信忠も、明智軍により二条城で憤死。このとが、相続問題を複雑にしていきました。相続人の候補者は、次男信雄、三男信孝、信長の弟信包、そして、「あっと、驚く」信忠の嫡子である三法師(三歳)。相続人を決定するために、織田家の宿老である柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興、滝川一益(一益は、会議の開催に間に合わない。)が清須城に集合します。
この本、小説ではなく、著者が三谷幸喜さんなので、脚本です。それも、時間を追って、登場人物のモノローグ(現代語訳)などで構成されています。モノローグとは、独白。演劇などで登場人物がつぶやく、独り言です。
『一日目
一 天正十年六月二十四日 朝
尾張清須城正門前における、
前田玄以の家来衆を前にしての訓示(現代語訳)
二 同年同月同日 午後
清須城を仰ぎ見る街道。
柴田勝家、馬上のモノローグ(現代語訳)
三 同年同月同日 それより約一時間後
清須城、奥の間。
信長の妹、お市の方のモノローグ(現代語訳)』
全編が、こういった構成になっており、天正十年六月二十四日から二十八日まで、歴史が動いた5日間をユーモアあり、ペーソスありで、また、ある意味、リアリテイもありです。そして、現代語訳という注釈がミソです。一部を紹介しましょう。
『三 同年同月同日 それより約一時間後
清須城、奥の間。
信長の妹、お市の方のモノローグ(現代語訳)
やっと権六が帰っていたわ。お顔を見に来たというわりには、ずいぶん長い間座ったものね。申し訳ないけど、私だってそんなに暇じゃないんですけど。昔から自分中心の男だったわ、柴田権六という男。相手の都合など、考えもしない。
それにしても権六も老けたわね。ご自慢のお髭にもすっかり白いものが混じっていたわ。でも、貫録だけは昔のまま。さすがは鬼の権六。あの歳の人にしては、筋肉質のいい身体をしていた。着物の上からでも分かった。そして、ごめんなさい。臭いも昔のままだった。体臭がきつい男の人って、歳取ってもずっと臭いのね。それどころか、加齢臭もプラスされて、なんだか凄いことになっていた。三メートルは離れていたのに、ツーンとしたもの。』
映画化!11月9日(火)公開とのこと。面白そうですね。