「清須会議」

tetu-eng2013-10-27

清須会議
 三谷 幸喜
 幻冬舎文庫
 平成25年7月25日初版発行
 平成25年8月10日2版発行
 571円(税別)

 尾張国春日井郡清須(現在の愛知県清須市)。ここに、織田信長の居城である清須城がありました。東海道新幹線岐阜羽島駅方面から名古屋駅に向かう手前の右側に、模擬城として再建された清須城を見ることができるはずですが、どうでしょうか?名古屋や東京へ行くときに、見たことがあるような、ないような?歴史上、有名な「清須会議」は、この清須城が舞台となりました。

 天正10年(1582年)6月2日、本能寺において、明智光秀の謀反のため、織田信長が天下統一を目前にして憤死。すでに家督を相続していた信長の嫡子である信忠も、明智軍により二条城で憤死。このとが、相続問題を複雑にしていきました。相続人の候補者は、次男信雄、三男信孝、信長の弟信包、そして、「あっと、驚く」信忠の嫡子である三法師(三歳)。相続人を決定するために、織田家の宿老である柴田勝家丹羽長秀羽柴秀吉池田恒興滝川一益(一益は、会議の開催に間に合わない。)が清須城に集合します。

 この本、小説ではなく、著者が三谷幸喜さんなので、脚本です。それも、時間を追って、登場人物のモノローグ(現代語訳)などで構成されています。モノローグとは、独白。演劇などで登場人物がつぶやく、独り言です。

 『一日目
 一 天正十年六月二十四日 朝
 尾張清須城正門前における、
 前田玄以の家来衆を前にしての訓示(現代語訳)
 二 同年同月同日 午後
 清須城を仰ぎ見る街道。
 柴田勝家、馬上のモノローグ(現代語訳)
 三 同年同月同日 それより約一時間後
 清須城、奥の間。
 信長の妹、お市の方のモノローグ(現代語訳)』

 全編が、こういった構成になっており、天正十年六月二十四日から二十八日まで、歴史が動いた5日間をユーモアあり、ペーソスありで、また、ある意味、リアリテイもありです。そして、現代語訳という注釈がミソです。一部を紹介しましょう。

『三 同年同月同日 それより約一時間後
 清須城、奥の間。
 信長の妹、お市の方のモノローグ(現代語訳)
 やっと権六が帰っていたわ。お顔を見に来たというわりには、ずいぶん長い間座ったものね。申し訳ないけど、私だってそんなに暇じゃないんですけど。昔から自分中心の男だったわ、柴田権六という男。相手の都合など、考えもしない。
 それにしても権六も老けたわね。ご自慢のお髭にもすっかり白いものが混じっていたわ。でも、貫録だけは昔のまま。さすがは鬼の権六。あの歳の人にしては、筋肉質のいい身体をしていた。着物の上からでも分かった。そして、ごめんなさい。臭いも昔のままだった。体臭がきつい男の人って、歳取ってもずっと臭いのね。それどころか、加齢臭もプラスされて、なんだか凄いことになっていた。三メートルは離れていたのに、ツーンとしたもの。』

 映画化!11月9日(火)公開とのこと。面白そうですね。