「孤舟(こしゅう)」

tetu-eng2013-11-24

「孤舟(こしゅう)」
 渡辺淳一
 集英社文庫
 2013年9月25日第1刷発行
 650円(税別)

 「定年退職後、いかに生きるべきか!?」こんな帯のレッテルに魅かれて読んでしまいました。還暦を過ぎて、こういった文句に魅かれてしまうのは、僕の境遇と相似して、僕自身が、「今」まさに、「いかに生きるべきか!?」を模索しているからでしょうか?イマジネーション力が、強い人ほど、考えてしまう傾向にあるそうです。そして、自ら「不安」を作り出して、「不安」が「不安」を呼ぶスパイラルに陥ってしまいます。何かを、考えることは悪いことではないのですが、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、デスネ。「何とかなるさ!」これも、必要です。

 「孤舟(こしゅう)」というタイトル。渡辺淳一さんお造語かと思ったら、ちゃんと、辞書に掲載されていました。「ただ一隻だけ浮かんでいる舟」の意の古語的表現。って、そのままです。歳をとったら、「孤独」に強くならなければならないが、決して、「孤立」してはいけない。なんて、哲学的な文句を読んだことがありますが、「孤舟」になっちゃいけないってことですよネ。

『威一郎が広告関係の大手の会社を辞めたのは、今からほぼ一年前である。
 もちろん辞めるに当たって、威一郎は威一郎なりに定年後の生活を考えていた。
 まず、体をゆっくり休めてやりたい。
 学生時代、少し学んだままになっているフランス語もやり直したい、本も読んでみたい、囲碁もみっちり教わって五段くらいになりたい、ゴルフも、これからは自由にのんびりやりたい。
 それに新しい恋もしてみたい。
 そして、ときにはのんびり旅にも出たい。
 いままで一緒に出掛けることはほとんどなかったので、妻は喜ぶに違いない。
 未来に向けて威一郎の気持ちは羽ばたいた。

 だが、辞めてみると、現実は想像したのとはまったく違っていた。
 なによりも威一郎が面食らったのは、毎朝起きても、やることがないことである。』

 大手広告代理店の役員を辞めた大谷威一郎。社内の派閥争いに敗れたものの、退職後に大いなる夢をもっていました。その夢は、一人よがりな夢でした。自分が会社に行っている間、妻は、じっと夫の帰宅を待っていたわけではありません。子育てが終わった妻には、すでに、妻の世界が広がっていました。そこに、毎日、居座っている夫の出現。あ〜あ〜、そりゃ、邪魔に思われるはずですネ。家事の一つも手伝わない夫。というか、やったことがないのでできるわけがない。そのうち、関係はギクシャクしてきます。ある日、突然、妻の出奔。「青天の霹靂」。家に残ったのは、犬のコタロウ。やれやれ、どうしたものでしょう。威一郎は、何とか、事態を打開しようと、のた打ち回ります。どこにでもありそうな話。

 この小説を読んで、思ったこと。僕の一番好きなことは何か?まずは、「好きなこと」探し。その「好きなこと」をやりたい。その「好きなこと」は、恰好をつけちゃダメ。勉強なんて、もともと、子供のころから嫌いなはず。それと、これが一番大事ですが、家事の一部をきちんと請け負うこと。僕にもできる風呂掃除、食器洗いなどは日課として当たり前かな!それから、それから・・・・って、まだ、年金生活まであと5年あるので、少しずつ考えなくちゃネ。そして、少しずつ、準備しなくちゃネ。大学は入るための受験勉強、就職するためにの就活準備と同じように、年金生活するための準備も怠りなく。