「リベンジ・ホテル」

tetu-eng2014-01-19

「リベンジ・ホテル」
 江上 剛
 講談社文庫
 2012年3月15日発行
 743円(税別)

 今朝、神戸は初雪でした。「初雪に 涙がにじむ 寒さかな」

 「アベノミックス」により、日本経済は上向き始め、新卒の求人は、一時期の氷河期から脱したようです。ぼくの息子が就活時期を迎えたとき、まさに、大氷河期と言われ、彼も、大変、苦労していました。ぼくも、随分と心配しましたが、早いもので、彼も、入社4年目を迎えます。まあ、とりあえず、一人前の大人として、歩み始めたことは、親としての責任を果たしたということでしょうか。

 花森心平。東西大学経済学部の学生、就職活動、真っ最中。ここ数年、大学生の就職難が続いており、特に、心平の卒業年度は内定率60%にも満たない状況。東西大学は、有名大学ではないが、二流と三流の間程度の学校。卒業を前にして、心平は、内定が取れないで焦っています。就活フェアは、そんな学生でひしめき合っています。そのとき、あるブースの採用担当者の高島と目があって、引き込まれるように、そのブースの中に入っていきました。そのブースが、「ホテル・ビクトリアパレス」。

『「正直に言います。私、いろいろな会社を受けていますが、内定がもらえないんです。友人は、自信がないように見えるところが悪いんだと言うのです」
「ホテルはあなたのような方を探しているんです。ホテルは、お客様が主人公です。俺が、俺がというようなタイプではダメです。自分が主人公にならない方がいいのです」
「本当に、私みたいなタイプがいいのですか?」
 心平は、信じられない思いがした。もし、高島の目がなければ頬をつねったかもしれない。
「花森さん、一緒に私と働きませんか?これもなにかのご縁です。ぜひ、我がホテルに来てください」
「えっ、それって内定ってことですか?」
「そうです。その通りです。」
「こんなに簡単に内定いただいてもいいんですか?」
「いいんです。いいんです。いい人は、一目で分かります。もうすぐ三月も終わりです。四月からうちに来てください。必ずですよ」』

 ホテル・ビクトリアパレスは、都心から私鉄で向かいH市駅に隣接する創業三十年の薄汚れた感じのする十階建ての地方ホテルでした。しかも、その経営状況は、深刻であり、銀行からの融資打ち切り、貸しはがしに直面して、なお、ホテルを廃業してショピングモールに建て替える計画もありました。折角、就職したホテルの危機です。ここから、新入社員花森心平のホテル経営の立て直しの大活躍が始まります。

『第一章 ようこそ、ホテル・ビクトリアパレスへ、 第二章 お客様に選ばれる人になりましょう、 第三章 ホスピタリテイの「八つの心」を持っていますか、第四章 オンリーワンになろう、第五章 プロフェッショナル感覚を持とう、第六章 出来ない理由よりどうしたら出来るか考えよう、第七章 日々の仕事にベストを尽くすこと、それがリーダーの資質、第八章 色気は、非効率性から醸し出されるものです、第九章 地域社会満足度を考えていますか、第十章 仕事は人生そのものです』

 まるで、経営指南書のような章のタイトルですが、「色気は、非効率性から醸し出されるものです」なんて、いいですね。経営効率ばかりが声高に言われますが、それじゃ、色気がなくなりますよ。「色気」って何でしょう。それは、この本を読んでみてください。お客様商売は、お客様への色気を失っちゃダメですよね。