「肝臓先生」

tetu-eng2014-04-20

「肝臓先生」
坂口 安吾(あんご)
角川文庫
1997年12月25日発行
480円(税別)

 うむ、近刊本ばかりではなく、久しぶりには、ちょっと、古いものもいいんじゃないかな。と、思って、坂口安吾をチョイスしました。坂口安吾といえば、「堕落論」ですが、う〜ん、読んだかな?読んでないかな?記憶が定かではありませんが、「肝臓先生」は読んでいないことは明々白々。なぜならば、タイトルの記憶がないからね。

 坂口安吾。明治39年生。昭和21年に発表した「堕落論」で文壇の地位を築いたそうです。当時は、織田作之助石川淳太宰治等とともに無頼派の作家として、名をとどろかせていたようです。皆さん、戦後復興期の人気作家ですね。僕なんかからすれば、有名な「走れメロス」(太宰治)が、教科書に載っていたので、何となく古典的な感じもしますね。でも、昭和世代の僕とすれば、そんな昔でもないんだなってことです。まあ、昭和は長かったですからね。

 話はそれますが、テレビで「昭和の歌」という番組を放映していますが、昭和は63年あり、あまりにも時代変動が大きかったので昭和を一括りにしてしまうのは無理があると思います。戦前(〜昭和20年)・戦後復興期(〜昭和30年)・高度成長期(〜昭和50年)・昭和成熟期(〜昭和63年)の4期ぐらいに分かれるのではないでしょうか?おそらく、小説などの文学の世界も、そんなイメージですかね。まあ、ご専門の方が、研究されているとは思いますが。そうすると、坂口安吾は、戦後復興期ですね。昭和30年に、四十九歳で亡くなっています。

 この本には、「魔の退屈」「私は海をだきしめていたい」「ジロリの女」「行雲流水」「肝臓先生」の5編の短編が収録されています。

 伊豆の伊東に赤城風雲先生という町医者あり、赤城先生が、診る患者、診る患者、皆、肝臓病と診断します。戦後、大陸から蔓延した流行性肝臓炎と命名。一介の町医者として、この流行性肝臓炎に立ち向かう赤城先生の奮闘、まことに、あっぱれなり。まさに、風車に立ち向かうドン・キホーテを彷彿とさせる赤城先生なり。

『汝は何者であるか、ときかれると、さしずめ、人々が肝臓医者さと答えてくれるところを、先生は、余は足の医者である、と答えるのである。町医者というものは、風ニモマケズ、雨ニモマケズ、常に歩いて疲れを知らぬ足そのものでなかればならぬ。天城山の谷ふかく炭やく小屋に病む人があれば、ゲートルをまき、雲をわけて、走らねばならぬ。小島に血を吐く漁夫があれば、小舟にうちのり、万里の怒濤をモノともせず、ただひたすらに急がねばならぬ。それが町医者というものだ。』

 軽快な文章で、テンポ良く読めます。このスタイルが、当時の流行だったのかもしれません。次は、もう少し、時代が下がって、芥川龍之介を読んでみましょうか。

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