「ツナグ」

tetu-eng2015-01-11

「ツナグ」
辻村 深月(みづき)
新潮文庫
平成24年9月1日発行
630円(税別)

昨年の長期予報では、この冬は、暖冬ということでしたが、昨年の12月から、「寒い!寒い!」の連発です。長期予報は、大外れですね。「七草がゆ」を食べて、松もあければ、すぐに、2月になるでしょう。

2月になると、花粉の声もチラチラ。僕は、例年、2月初旬から4月末まで、アレルギーの薬を服用するのが恒例となっているので、「嫌な」季節の到来となります。最近は、年の所為か、鼻水、鼻ずまり、くしゃみなどの症状も、緩やかになってきましたが、薬の服用を止めたら、どうなるか?と、思うと、止められないでしょう。

なんてことを、もう、考え始める今日この頃です。

『使者は、依頼人の依頼を受け、依頼人が会いたいと希望する死者に交渉する。
会うつもりがあるかどうか、気持ちを確認して、承諾が得られれば、その人を会わせることができる。』

使者を「ツナグ」と呼ぶ。

ただし、もう少し、細かいルールがある。依頼人が会えるのは一生で一度だけ。死者も、現世の人と会えるのは1回だけ。相互にワンチャンスである。

さて、あなたは、誰と会いたいですか?親爺ですか?お袋ですか?それとも、いろいろ、その人によって、事情はあるでしょうね。もちろん、相手もワンチャンスなので、断る権利があります。
僕の場合、親爺をセレクトすると、お袋に悪いし、お袋をセレクトすると親爺に悪いし、かと言って、じいさん、ばあさんというセレクトもないし、そのほかに、是非もう一度お会いして、宝の在処を聞き出すような人もいないし、結局は、権利?放棄ですかね。

小説では、好きだったアイドルとファン、権利書の在処を聞くためにお袋と長男、トラップを仕掛けたと思っている親友同士が「使者」のクライアントです。お話の構成は、オカルトっぽいですが、内容は、まったく、オカルトっぽさはありません。

『「靖彦」
声を聞き、目を開けた。
正面に、柿色の着物を着たお袋が立っていた。
「・・・・母さん」

お袋、本人だった。
「全く、靖彦、本当に・・・」
薄い涙の膜が張った目が、ゆっくりと呆れたように瞬きする。
「母さん恋しさに呼ぶんじゃないって言ったのに、仕方ないねえ」
「好きで呼んだわけじゃない」
山の権利書が ―――、と続けようとしたところで、お袋の手が顔に伸びてきた。最後、納棺の直前に触ったお袋の身体は死後硬直が始まったせいで、石のように硬く冷たかった。
「靖彦」と呼んで、俺の頬を触った手。体温を感じた瞬間、身体が震えた。歯を食いしばって、洩れそうになる声を抑える。目に、涙が滲んだ。』

やばい!親爺は、10年前。お袋は、2年前。やっぱ、お袋かな。薄い涙の膜が張ってしまった。