「ビブリア古書堂の事件手帖 6 〜栞子さんと巡るさだめ〜」

tetu-eng2015-02-01

ビブリア古書堂の事件手帖 6 〜栞子さんと巡るさだめ〜」
三上 延
メデイアワークス文庫
2014年12月25日発行
570円(税別)

先週のお堅い本から、一気に、ライトノベルブックというか、娯楽的な小説(ノベル)です。

1年、早いものですネ。待ちに待った「栞子さん」の第6巻です。三上さん、もっと、しゃかしゃか、書いてよね、と言っても、結構、巻末に参考文献が列挙されていますが、それなりの調査に時間が必要なようです。と言うことは、今回は、太宰治がモチーフになっているので、太宰治の研究をされたといいことで、ライトではなくヘビーだったんですネ。

以前からアクセスされている方は、もう、6回目の「栞子さん」の登場なので、ご存じだと思いますが、1年前と言うことで、すこし、復習します。

北鎌倉の「ビブリア古書堂」の店主の篠川栞子さんと「おれ」こと店員の五浦大輔が、お店に持ち込まれる古書にまつわる様々な出来事を紐解く、古書ミステリーです。もちろん、ほのかな恋愛ストーリーもあり。そうそう、第6巻で漸く知りましたが、「ビブリア」とは、ラテン語で「聖書」という意味だそうです。「バイブル」の語源になるのでしょうか?五浦君も、第6巻で知ったそうです。

今回の古書は、太宰治の「晩年」です。この本は、これまでも、「栞子さん」所有の初版本を巡って、いろいろと曰く因縁があったのですが、それは、第2巻ぐらいに遡ったお話です。

『(「晩年」は昭和十一年に刊行された、太宰治の処女作品集です)
確かそんな風に始まったと思う。あれは去年の九月、場所は大船の商店街だった。太宰の「晩年」についての説明を聞きたいと、俺から栞子さんに頼んだのだ。日が暮れていく中、よく響く澄んだ声にただ耳を傾けていた。
(初版はたった五百部でした。太宰はまだ二十代でしたが、この本のために十年を費やし、五万枚もの原稿を書いたといいます。収録された作品はその中のほんのわずかで、他の作品はすべて破り捨ててしまったそうです。』

太宰・・・恐るべし。五万枚もの原稿を書くとは、その筆力は、すごいですネ。昭和十一年、当然、万年筆でしょうから、ペンだこがつぶれたことでしょう。僕は、若いときに、五百枚の原稿(四百字詰原稿用紙)を書いた経験がありますが、そりゃ、大変でした。その100倍ですからネ。なんて、余談はここまで・・・続いて、

『「私はこの本一冊を創るためにのみ生まれた。きょうよりのちの私は全くの死骸である」と「もの思う葦」に書いています。最初に少年時代を振り返った「思い出」を執筆しましたが、一作だけでは満足できませんでした。
それまでの生活のすべてをぶちまけたいという思いから、腰越の小動岬(こゆるぎみさき)で起こした心中事件を題材に「道化の春」を書き・・・・』

と、ここまで紹介すると、太宰の「晩年」を読んでみたくなりましたネ。でも、処女作品集なのに、何故、タイトルが「晩年」なんでしょう。たぶん、「晩年」という小作品が収録されているのでしょうか?という疑問もあり、早速、「晩年」を求めることにしましょう。初版本は、稀覯本だし、手に入らないでしょうから、もちろん、文庫本ですネ。

本って、ほんとに、面白いですネ。