「イニシエーション・ラブ」

tetu-eng2015-06-14

イニシエーション・ラブ
乾 くるみ
文春文庫
2015年3月15日第58刷

2007年に文庫化されて、これまで140万部を売り上げた超ベストセラーです。5月23日から映画化され、ROADSHOW。このストリーの映画化は、難しいと言われていましたが、どう映像化したのか、興味はあります。もう、何十年も映画館に行っていないので、当然、まだ、観ていませんが、早く、DVDにならないかな。

ある日、友達が、Facebookに「イニシエーション・ラブを観た」との投稿あり。早速、ぼくから「たっくんはひどい奴だ。まゆがかわいそう。」というコメント。すると、友達から「女はおそろしい。ガハハ!」という返信。うん、こりゃ何だ。

ここから、この小説の謎解きが始まりました。

本の裏書きに「瑞々しい筆致で描いた青春小説―――と思いきや、最後から二行目で、本書は全く違った物語に変貌する。」・・・・・・うむ、何のこと。ぼくは、普通の恋愛小説で、「たっちゃん」が二股かけて「まゆちゃん」を袖にする小説としか認識していなかったのに・・・・・。最後から、二行目に秘密がある。

あっ、判っちゃいました。ネタをばらしていいのかな?こりゃ、傑作ミステリーですね。

小説は、side−Aとside−B、要するに、前編と後編に分かれています。全体の流れは、「男女七人夏物語り」のノリですね。

side−A、舞台は、静岡市静岡大学数学科の学生鈴木夕樹(作者の乾さんも静岡大学数学科卒)と歯科衛生士の成岡繭は、合コンで出会い、つきあい始めます。

『「鈴木くんは友達からどういうふうに呼ばれている?」
「う〜ん。普通に鈴木、とか、あとは名前でユウキ、とか」
「じゃあ私もユウキくんって呼ぼうかな。でも・・・ユウキって高校のときの同級生でいたんだけど、私あんましその子、好きじゃなかったんだよね。だからちょっと抵抗があったりして、でもいつまでも鈴木くんって呼んでるのも他人行儀だし、鈴木くんはどう呼ばれたい?」
「う〜ん」僕は悩んでしまった。
「ユウキってたしか、夕方の夕に樹木の樹って書くんだよね?」と成岡さんが聞いてくる。あ、ちゃんと憶えていてくれたんだ、と嬉しく思いながら僕が頷くと、
「じゃあさ、夕方の夕って、カタカナのタと同じに見えるじゃない?だからタキで――たっくんっていうのはどう?」』

side−B、舞台は東京。たっくんは、就職して、東京勤務となり、まゆちゃんとは、遠距離恋愛となります。毎週、静岡を車で往復。そのうち、たっくんは、職場で知り合った美弥子と親しくなり、まゆちゃんとの関係はぎくしゃくし始めます。その間、まゆちゃんの妊娠、堕胎などの事件は起こります。やがて、たっくんとまゆちゃんは、破局を迎えました。

『美弥子の部屋で、彼女と二人でいるというのに、なぜか別れたはずのマユの思い出が胸に溢れてきた。
彼女は今、どうしているのだろう・・・・。
胸苦しさを感じた僕は、大きく息を吐いた。その動きに不審なものを感じたのだろう、美弥子が訝しそうな声で聞いてきた。
「・・・・何考えているの、辰也?」
「何でもない」と僕は答え、追想を振り払って、美弥子の背中をぎゅっと抱き締めた。』

さあ、みなさん、謎は解けましたか?ちなみに、「イニシエーション」とは、「通過儀式」。「イニシエーション・ラブ」は、ぼく的には、「(一夏の)恋の経験」。山口百恵の歌みたいですね。