「異人館画廊」

tetu-eng2015-07-12

異人館画廊」
谷 瑞恵
集英社文庫
2014年2月28日第一刷発行

やれやれ、今週は、病院巡りで始まりました。月曜日に、眼科、皮膚科、そして、水曜日に、内科です。いずれも、問題なし。「生理的なものです」ということでした。うむ、生理的なものって、結局、老化現象ということなのですね。特に、鬱陶しいのが、飛蚊症です。7年ぐらい前から飛んでいるのですが、最近、少し、飛ぶ量が増えているようです。まあ、また、慣れるしかないのですね。

もう、十年前から体調不良は、ぼくの専売特許です。常に、脳がレーダーのように体の不調を捜しているのです。したがて、いつも、どこか不調の箇所があるということです。でも、これって、歳をとると多かれ少なかれ、そんなものみたいですね。同年代が、寄ると触ると、病気自慢が始まります。いやだねって、思うけど、それで、ストレスを解消しているのですよ。

そんな近況を前書きにして、今週は、谷瑞恵さんの「異人館画廊」です。彼女の小説は、「思い出のとき修理します」シリーズを読みましたね。物語全体が、ミステリっぽいですが、やさしい雰囲気に包まれているというイメージでした。

この物語の主役は、此花千景(このはなちかげ)。英国に留学して、図像学を学んで、帰国。図像学???

『千景の研究対象は、図像学の中でも図像術、つまり、絵画に描き込むことで、見る人に様々な影響を与えることができると、かつて信じられていた特殊な図像についてだった。
一見何のことはない小道具や背景にある物の絵が、神話の神々や聖人や、“愛”や、“時間”などといった形のない意味さえ象徴している図像。ときにはそこに、恐ろしい意味が込められている場合もある。』

何だか、意味不明ですが、「だまし絵」みたいなもので、絵画に何らかのメッセージが込められており、その絵画を見た人に何らかの影響を与えるような技法なんでしょうか?

『そうした図像は、ヨーロッパでは主にキリスト教の異端や悪魔と結びついているが、けっして悪魔そのものを描いているわけではない。むしろ、古代のギリシャやエジプトで発達した神秘主義のイメージを使うことが多いと考えられているが、その研究はまだまだ進んでいない。』

まあ、何だか判りませんが、神秘な絵画で、見た人が憂鬱になるか?ハッピィになるか?なんでしょう?しかし、物語では、そんな生やさしいものではなく、見た人が自傷行為をするという絵画なんです。でも、その絵画の毒を打ち消す絵画が、別に存在する。二つ並べてみれば、問題ないが、ある一方のみでは、殺人の道具になるというシチュエーションです。

ところが、その二つの絵画が盗難に遭いました。さあ、大変。ここからが、ミステリの始まりです。図像学の研究をした千景の出番です。早く、この盗まれた絵画を取り戻さなければ、殺人が起こります。しかし、迂闊に、絵画を見つけても、見ることもできません。真贋の判定ができないのです。

そんなこんなの舞台は、異人館画廊。もちろん、神戸です。

物語のラスト

『「クルーズ船に乗りましょう。海峡大橋のライトアップが見られますよ」
「橋?」
「世界一の吊り橋です・十年前にはまだライトアップはなかったと思いますけど、見たことありませんか?それは美しい建造物です」
「建築にも興味があるの?」
「額縁に納まらない美術品ですから」』