「セカンドラブ」

tetu-eng2015-07-20

「セカンドラブ」
乾 くるみ
文春文庫
2014年7月5日第14刷発行

台風11号が、金曜日未明に四国の室戸岬に上陸、四国を縦断して、朝方には瀬戸大橋上空を通過して倉敷に再上陸。
神戸でも、ちょうど、出勤時間に暴風雨で天気は大荒れ模様。マンションの窓から外を眺めて、さて、どうやって出勤しようかと思い悩むばかり。問題は、マンションから地下鉄の駅までのわずか7〜8分の徒歩区間です。ここで、濡れ鼠になると、冷たい1日になってしまいます。とくに、靴の中がグチョグチョになると最悪。

細君が、ビーチサンダルで行けば、と、奇抜なアイデアを提供。うむ、それで行くか。と、安易に同意。早速、着替えをして、adidasのビニール袋に靴、靴下、タオルを入れて、ズボンの裾を膝までまくり上げ、ビーチサンダルを履いて、上は、ポンチョをかぶって、潔く、「行ってくるぞと、勇ましく」のかけ声とともに、家を出かけました。
途中、出勤するサラリーマンからは奇異な目線を感じますが、こっちとらは、江戸っ子ではないが気にしない!気にしない!と、前を見ると、同じような格好のお方が1名。へえ、似たようなことを考える人がいるんだな。と感心しきりです。無事、地下鉄の駅までたどり着き、ポンチョを脱いで、足を拭いて、靴下をはき、靴を履いて、いつもの、真っ当なサラリーマン姿に変身です。

なんてことを、書いていると紙面が埋まってしまいますので、読書雑感に移ります。

乾くるみさん」って、てっきり女性だと思っていましたが、ありゃ、びっくり。ちょうど、十歳下のおじさんでした(失礼しました。)。「イニシエーション・ラブ」といい、「セカンド・ラブ」といい、どう考えても偏見ではなく、女性的な小説でしょう。何が、女性的なのか?うむ、男性の感情表現が下から目線とでもいうのでしょうか?男性の小説では、上から目線になりやすいのですが・・・。

正明は、スキー旅行で春香と出会い、そのまま、恋に落ちます。ここまでは、普通の恋愛ドラマ。ところが、あるとき、新宿のスナックで春香にうり二つのホステスのミナと出会います。ミナからは、ミナと春香の出生の秘密・・・二入は一卵性双生児だが、事情があって、ミナと春香は、別々に育てられ、その事情を、春香は知らない・・・という話を聞きました。

『「まず最初に言っておかないといけないのが、私は春香さんじゃないってこと。他の誰でもない。私は私。美奈子です」
彼女はそんなふうに前置きをして、自分と春香との関係を説明し始めたのだった。
「この話、彼女には絶対言わないで、秘密にしといてくださいね。実は、彼女−内田春香さんは−私の双子の姉なんです。・・・・・といっても向こうは私のことは知りません。事情があって、生まれてすぐに離れ離れになって、彼女は横浜で、私は秋田でそれぞれ別に育てられました』

同じ顔、同じ声、同じ姿をした二人の女、しかし、一方は清楚、一方は大胆。その狭間で、正明を小舟のようにユラユラと揺れ動きます。ところが、正明の頭に、ある疑念が浮かび上がってきます。その疑念の真相は・・・・・どんでん返しの「恋愛ミステリー」

『自分の妻が歳を経たときに、それよりも若くて美しい女性が相対的に多くなったと勘違いして、結果、つい浮気をしてしまうのが、世の男性の劣っている点であり、間違っている点である。自分の妻は、どれだけ歳を経て容色が衰えたとしても、常に百点であり続けるべきなのだ。「ぶれ」にない評価こそが、相手を「完璧」なままにし続ける。百点の評価を変えない意志の「靱さ」が、実際はどうであれ、気持ちの上では、相手の容色を衰えさせない力の源となるのだ。パートナーの男性がそう思っていてこそ、女性はいつまでも若く美しくあり続けるのである。』