「月下上海」

tetu-eng2015-08-02

「月下上海」
山口 恵似子
文春文庫
2015年6月10日第1刷発行

暑いですね。

この一言です。気温が高いだけではなく、湿気を感じます。空気が、肌にまとわりつくようで、どうにも、不快指数(最近、あまり聞かない単語ですね)が高いんじゃないでしょうか?

ぼくは、昼間は、快適なオフイスに居るので、贅沢は言えませんが、それでも、通勤時と外出時との温度差で、冷房病(これも、最近、あまり聞かない単語ですね)かもしれません。

うむ、歯が痛いのです。歯医者さんで2回も診察してもらって、虫歯はないとの折り紙付き。でも、虫歯じゃないのに歯が痛いのです。ネットで調べると・・・(ネットって本当に何でもでていますね。何か、困ったことがあったり、気になったことがあれば、ネットで単語を入力して検索すれば、大方のことはヒットします。ただし、すべてが、信頼できるかどうかは別です。)いろいろ、出てきますが、歯が悪くないんじゃどうしようもありませんね。ここは、我慢!ってことで、冷房病かな・・・なんちゃって!

ここで、一言、「情報の暴飲、暴食は不安の元」・・・これって、ぼくにピッタリのお言葉ですね。

また、また、「上海」です。

「上海」は、死んだ親爺が、戦前に学生時代を過ごした場所であり、上海の話は、よく聞かされたものです。そう言う理由で、「上海」というレッテルの本を見ると、ついつい、手が伸びてしまいます。

山口恵似子さんは、丸の内の社員食堂のおばさんをやりながら小説を書いていたと言うことで、ちょっと、話題となった方です。この作品は、松本清張賞の受賞作です。

『昭和十七年(1942)十月十二日、日支連絡船・多幸丸は上海港に入った。
上海港は直接海に面していない。揚子江の支流である黄甫江を上流にさかのぼった、その先にある。
船が東シナ海から揚子江の河口に入ろうとする時、甲板にいる船客は不思議な光景を目にする。青白い海の水の先に、茶色い水が広がっているのだ。茶色い水は揚子江である。スクリューで水をかき回しながら、船は青白い水域から茶色い水域へと入って行く。』

物語は、戦前の上海が舞台です。画家の矢島多江子は、単身、上海へ渡航してきた。多江子が上海にやって来たのは、中日文化協会の招聘で、絵の個展と文化講演を行うのが目的でした。ここで、彼女はアテンドの岸武と親しくなります。ところが、岸は、中日文化協会を内偵するために協会に潜入していた憲兵でした(実は、上海憲兵特高課 槙庸平大尉)。

多江子は、日本での秘密のスキャンダルをネタにして、岸から中国人実業家の夏方震(シャーフォンチェン)に近づき、彼の動向をスパイすることを強要されます。当時の中国は、清王朝が滅亡後、蒋介石の中国国民政府、毛沢東中国共産党、そして、中国での覇権を目指す日本陸軍など、不安定な政治情勢の中で、日中戦争第二次世界大戦へと突き進んでいきます。
そんな状況の中で、多江子の運命は・・・・・。

『「夏方震・・・・・シャーフォンチェンという実業家がいる。上海でも指折りの大富豪だ。こいつが重慶とつながって、南京政府転覆を画策している疑いがある。おそらく疑いではなく、事実だ。奴に近づいて、尻尾を捕まえて欲しい」
蒋介石率いる国民党政権は重慶に拠点を移し、南京には日本の画策で誕生した王兆銘を中心とする親日政権が置かれていた。』

サスペンス小説でしょうが、戦前の上海の街が写実的に描かれており、なかなか、読み応えのある作品でした。