「円卓」

tetu-eng2015-08-23

「円卓」
西 加奈子
文春文庫
2014年5月20日第7刷発行

最近、7年、続けてきた「dandy−papa」が、すこし、マンネリ気味ですね。ぼくの中で、そろそろ変革が必要だという思いがふつふつと沸いてきているのですが、さて、どうしようか?と、思うと、よい考えがありません。
そもそも、歳をとると変革は、好まないものです。

もともと、すでに読んだ本を、また、買って読み始めて、「うん、これ読んだな。」という情けないことがあったので、記録と記憶にとどめるために、このブログを始めたのです。ところが、歳を経るに従って、本を読むことは、好きなのですが、「読書雑感」まで書くことが、だんだん、億劫になってきました。

と、思いつつ、この億劫さを克服しなければ、「初老のブロガー」とは言えないでしょう。ここは、奮起して、やはり、「継続は力なり」のスローガンの下に、「エイ、エイ、オー」で頑張りますか!まだ、まだ、読んでいただいている方には、お付き合い願いましょう。

公団住宅で、三つ子の姉と両親と祖父母と賑やかな生活を送っている「こっこ」(小学3年生)の日常と非日常が、ユーモラスに描かれた、これ純文学ですね。

『渦原琴子。
ことこ、が言いにくいので、こっこ、と児童らは呼んでいるが、男子は当然のごとく、鶏の歩き方を真似てみたり、「こけこっこ」に始まる、呑気な歌を歌って、こっこをからかう。
「こけこっこ。こけこっこ。こっこのとさかはさとおやに。」
無知な歌だ。「こっこのとさかは里親に」という節の理由や由来は、今となっては誰も知らないが、禍々しい雰囲気は伝わる。とにかく、それは、こっこに振り向いてほしいための、愛の歌なのである。』

軽快な文章でつづられている西加奈子の小説は、いま、若い女性から多くの支持を得ているそうです。かの又吉大先生も、ファンであるとかないとか?この小説は、児童小説に近いと思うのですが、ただ、小学生の「こっこ」の内面は、すでに大人の女性を凌駕する繊細さをもっているのです。

「こっこ」の楽しいこと、面白いこと、悲しいこと、寂しいこと、みんないっぱい、いっぱいつづられています。読みながら、共感したり、バカじゃないって思ったり、それが、この小説の愉快なところでしょ。

『夕食だ。
渦原家のテーブルは、潰れた駅前の中華料理屋、「大陸」からもらってきた、円卓。とても大きいから、居間のほとんどを、占拠している。とんでもない存在感、深紅だ。そこに、父、母、三つ子、祖父、祖母、こっこ、の八人で座るものだから、風景として圧巻である。
卵焼きも野菜炒めもそうめんの薬味も、円卓をくるくる回り、家族に届けられる。つまり、大家族にはとても便利なテーブルなのだが、六畳居間の畳の上では、やはり圧巻である、深紅だ。』

なお、この小説、昨年、芦田愛菜ちゃんの主演で映画化されています。