「何者」

tetu-eng2015-09-13

「何者」
朝井 リョウ
新潮文庫
平成27年7月1日発行

9月10日(木)
あの酷暑から、涼しくなったと思っていたけれど、昨年は、9月10日から長袖のワイシャツを着たとの日記の記録。今年は、まだ、半袖で、十分、不都合を感じていない。暑さ寒さに鈍感になったのか?酷暑の名残で、昨年よりは気温が高いのか?

「暑さ、寒さも彼岸まで」というので、お彼岸過ぎには、長袖ワイシャツに衣替えをするのでしょう。最近、クールビズや気候の亜熱帯化で、どうも、むかしの季節感とズレがあるみたいで、初老のおじさんには、戸惑いがあります。

9月11日(金)
ところが、9月11日(金)には、秋の長雨がカラリと晴れて、朝夕がめっきり涼しくなりました。こりゃ、来週の月曜日から長袖ワイシャツですかね。地下鉄でも、長袖ワイシャツ、スーツ姿が目立ち出しました。

トップの写真は、東公園で開催される神戸ビエンナーレ・・・「輝く人」・・・「何者」

『たくさんの人間が同じスーツを着て、同じようなことを訊かれ、おなじようなことを喋る。確かにそれは個々の意志のない大きな流れに見えるかもしれない。だけどそれは「就職活動をする」という決断をした人たちひとりひとりの集まりなのだ。自分は、幼いころに描いていたような夢を叶えることはきっと難しい。だけど就職活動をして企業に入れば、また違った形の「何者か」になれるのかもしれない。そんな小さな希望をもとに大きな決断を下したひとりひとりが、同じスーツを着て同じような面接に臨んでいるだけだ。』

就職活動を控えた5人の男女。それぞれの、将来への道筋を考えながら、また、意見を交換しながら、自分の道を見つけようとする。彼ら5人は、就職活動の場において、競争相手でもある。そこには、自らの活動や情報をすべて共有することはない。

この小説では、SNSで、5人が本音を書き込みますが、この内容が、ほかの5人にも読まれているという、ちょっと、間抜けな設定もあります。ツイッターフェイスブックなどのSNSの書き込みを小説の中に取り込んで、5人の若者の言葉とは違った世界を表現しているのは、おもしろい試みですね。

2013年直木賞受賞作です。

学生から就職をして、自分が「何者」になるか?それは、学生という身分から社会人という身分に変わるだけで、自分の内面は、大きくは変わらないのではないでしょうか?

学生時代に、社会人になって、どんな仕事をしたいか、という明確な目標がない学生が多いと聞きます。もちろん、希望の叶う学生は、多くはないと思います。それでも、自分に与えられた場所を大事にしていくしかないのでしょう。

もちろん、ぼくの時代と、今の時代は、随分と価値観が違うので、ぼくも息子へのアドバイスが時代錯誤ではないかと思うこともあります。

結局は、自分で考えるしかないのでしょう。自分が「何者」になるか。なることができるか。

そういえば、また、来年の就職活動のルールが変わるそうです。若者は、大人の都合で、右往左往させられます。それでも、若者は、この時期に、自分が「何者」になるのかを考えることも必要でしょう。