「森の家」

tetu-eng2016-01-31

「森の家」
千早 茜
講談社文庫
2015年12月15日第1刷

いつものとおり、余談から始まります。

捨てる神あれば、拾う神あり。

先週の土曜日、三木の田舎道を3台の車(ぼくの車は最後尾)が、ほぼ同じ速度で走っていました。
「あっ・・・!」と、気がついたら、手遅れでした。いや、足遅れです。いつもなら目ざとく気がつき、スピードを緩るめるのですが、「ねずみ取り」に引っかかりました。
「ここ、40キロ、知ってますか?」
「えっ、ちょっと前まで50キロだぞ。」「何で、市街地でもないのに40キロなんや!」「合理的説明をしろ!」「前の車も同じ速度やないか!」・・・・すべて無視。
反則金は払わなくてもいいですよ。」
「なんじゃそれ!」・・・・気分悪い。あとは、ご想像に委せます。

先週の水曜日、帰宅すると宅急便の箱が、ダイニングテーブルに置いてありました。開封してみると、「おっ・・・はちみつのプレゼント!」
はい、愛用の100%ハチミツキャンディ(扇雀飴本舗)の「はちみつプレゼント」からの当選通知と世界のハチミツ3点セットでした。
「うん、ラッキー!」

「森の家」は、不思議な家と不思議な家族の物語です。

『家は名も知らぬ木々で覆われている。夜見ると小山のようだ。近所はどこも日本風の門構えで庭木もよく剪定されているが、この家だけは枝を払わず好きに伸ばさせているため、植物たちが隙間なく絡まりあっている。おかげで家の中は涼しいが、一階は昼間でも暗い。ただでさえ静かな通りの音も遮断される。』

不思議な家の紹介です。「森の家」のタイトルどおりで、この家に棲んでいる住人も、不思議な関係の三人です。

『三人で暮らしはじめてもう一年になる。
私たちの暮らしぶりは共同生活という感じだ。佐藤さんは私の恋人で、歳はひとまわり違ういい大人。まりも君は佐藤さんの息子で大学生、これまた私とひとまわり違って、もうすぐ二十歳になる。奇しくも私たちは同じ干支だ。』

まりも君は、六歳の時に、お母さんが亡くなり、そのとき、お父さんだよと言われた佐藤さんが、まりも君を引き取ったので、関係は、もっと不思議なのです。この三人が、同じ家で暮らしながら、家族の関係を意識することもなく、自然と家族の関係を紡いでいくのですが、まりも君が二十歳になったとき、佐藤さんが居なくなります。

そう言う約束だったのです。でも、15年、一緒に暮らした家族は、みえない糸で繋がっているのです。それぞれ、どんなに強がっても、そんな不思議な家族を描いた家族小説です。

『「三人の間の糸は家族の色をしているよ。同じ家に住んでいるからだろうね」
「家族の色か」
呟いて、小さな笑いがもれた。それは、一体どんな色なのだろう。くすんでいるのか、鮮やかなのか、まったく想像がつかなかった。
「随分と寄せ集めの家族ですけどね。僕もまりも君もみなしごみたいなものだし、みりちゃんも野良猫みたいに気ままだし」
「みんな、みなしごだよ」』