「怒り」(上・下)

tetu-eng2016-04-17

「怒り」(上・下)
吉田 修一
中央文庫
2016年1月25日第1刷

木曜日の21時過ぎ、熊本地方で、震度7の大きな地震が発生しました。被災された皆様には、お見舞い申し上げます。

その後、有感地震が200回を超えたとのこと、不安な日々を過ごされていると思います。なんと言って、地面が揺れると、どうにも、行き場がない。そこで、じっと揺れがおさまるのを待つしかないですね。

先日、神戸でも和歌山を震源地とする小さな地震がありましたが、オフイスのブラインドがカチャカチャと音を立て、船内で揺られているような感じが続きました。

地震大国の日本では、何処にいても、いつかは、地面が揺れるのは、覚悟して、そのときに慌てないような心がけが必要ですね。防災意識の日常化とでも言うのでしょうか。

いずれにしても、熊本地方の被災された方が、一日も早く心安らかな日々を迎え、被災地が、速やかに、復旧されることを祈っています。

で・・・、こんなときですが、「読書雑感」です。

久しぶりに、醍醐味のある長編ミステリーでした。

男は、八王子郊外の新興住宅地の一戸建てで、そこに住む夫婦2人を殺害した。

『男は血まみれの幸則も、里佳子と同じように浴室まで運んでいる。そして、この凶行の場となった廊下に血文字が残されていた。被害者の血を使い、男が指で書いたのは「怒」という一文字だった。』

『男の名前は山神一也。昭和五十九年、神奈川県川崎市生まれ、地元の高校を卒業後、職を転々とし、犯行当時は立川市のアパートで一人暮らし。無職。身長百七十八センチ、体重六十八キロ。
山神が逃走を始めてから、今月十八日で丸一年となる。今日現在、決定的な目撃情報はまだ寄せられていない。』

物語は、この殺人事件から始まります。

そして、一転、房総の港町、東京の青山そして沖縄の波留間島に身元不明の男が現れる。それぞれ、過去を隠すかのように生活している3人の男。

やがて、この男たちの生活の場が広がり、恋人ができたり、民宿で働いたり、それぞれ周囲の人と関わり合いを持ってきます。

そんなとき、テレビの番組で八王子の未解決の殺人事件の報道がありました。似ている。似ているが、そうではないと信じたい。果たして、この男たちの誰が、殺人犯なのか、それとも、殺人犯は、別人なのか?

孤独にひっそりと暮らそうとする身元不明の3人、それでも、人は人とのつながりから逃れることはできません。人は、完全に孤独の生活はできないのではないでしょうか?無人島に行けば、別ですが・・・。

孤独がストレスになる人、そうでない人、人は様々ですが、絶対の価値観はないのでしょう。ぼくは、孤独が嫌いですから、オフイスで1日、一人でジッとしていると、何だか、滅入ってしまいます。そんなとき、オフイスの窓から見える阪神高速を疾走する車を眺めています。あっ、今、渋滞していますね。

暢気ですみません。