「七つの会議」

tetu-eng2016-06-05

「七つの会議」
池井戸 潤
集英社文庫
2016年3月9日第2刷

先週、愚痴りました胃カメラ検査を無事、受診してきましたので、ご報告します。

6月1日(水)、8:45、病院に到着して受付。9:00、検査室に誘導。看護師さんから「初めてですか?」「ええ、30年前に受診しましたが、初めてみたいなものです。」「じゃ、ドキドキですね」「ええ、ドキドキです」「30年前より、随分、細くなっているでしょう」「はい」

検査台に横座りになって、胃を洗浄する液?を小カップ飲んで、スプレーで喉に二度、麻酔を噴霧。喉がしびれて、つばが飲み込めないので、鼻呼吸に集中。「はい、横になって」先生が、鎮静剤を注射。マウスピースを咥えて、「ハイ、始めます」・・・「ハイ、終わりました」

9:10、車いすに乗せられて、ベッドで横になって30分の休憩。「ええ、これで、尾張、名古屋??」嘔吐(えず)くとか、咳き込むとか、苦しいとか、・・・まったく、なし。1週間、ドキドキして細君からは、「蚤の心臓」と揶揄されたチキン野郎は、何だったのでしょうか?

休憩後、主治医の診察。「ポリープが、数個ありますが、すべて良性のもので、癌化することはないので、そのまま放置しています。」などなどの説明があり、そのあとは、最近の読んでいる本についての雑談でおわりました。・・・ちゃんちゃん!

ということで、久しぶりの池井戸潤です。「半沢直樹」が大ブレイクしたのは、かれこれ2年ぐらい前になるでしょうか?あれから、企業小説、経済小説のジャンルから少し離れていたので、「七つの会議」を新鮮な感覚で読むことができました。結論は、おもしろかったです。今回のテーマは、「企業倫理」でしょうか?

『逸郎はいま、そのネジをしげしげと見つめ、ちょうどネジ用の引張試験機の前で立ち止まった。
ふと思い立ち、手にした一本のネジをそれにセットし、スイッチを入れる。特段理由のない動作だった。あえていえば、ネジ屋の習性とでもいうか。
パチン、という音とともにネジが折れたのはその直後だった。
そこに表示された強度を確認した逸郎は、しばし声もなく、その場に立ち尽くす。
試験機が表示した強度は、本来そのネジが持つべきものを遥かに下回っていた。』

大手電機メーカーの子会社である東京建電は、中堅どころの電気機械メーカーである。この会社の厳しいコスト管理が、ひとつの不正を生み出した。それが、強度不足のネジの発注とその隠蔽である。ネジといっても、このネジ、飛行機や電車の座席の留め具として使用されており、強度不足が公になったら、大変な社会問題に発展する。

強度不足のネジの発注は、営業第一課長の営業成績のアップのための苦肉の手段でしたが、社内上層部に露見してからは、今度は、この事実をいかに隠蔽するかに会社が翻弄されます。この隠蔽工作は、誰の指示なのか?

東京電建で繰り広げられる会社の罪と罰。最近の車メーカーなどのリコール隠しは、きっと、この小説と同じ構図なのでしょう。

『顧客を大切にしない行為、顧客を裏切る行為こそ、自らの首を絞めることになる。それがわかっていたからこそ、村西は、顧客に無理な販売をしてこなかった。誠実に、顧客のためを思って働いてきた。
それが村西の首尾一貫した仕事の考え方である。
今回、自らの足下で惹起した不正の怒りを禁じ得ないが、特に許し難いのは、この不正の根幹に顧客軽視がちらつくことであった。
いまはっきりとわかる。あのとき、父がいった言葉は、ビジネスに携わる者が決して忘れてはならない金言なのだと。
―― 客を大事にせん商売は滅びる。』