「ラブコメ今昔」

tetu-eng2016-06-12

「ラブコメ今昔」
有川 浩
角川文庫
平成27年11月5日第9刷

ほぼ、平年どおりに梅雨入りして、雨の日が多くなりました。ぼくは、大雨でなければ、雨降りは、嫌いではありません。とくに、ベッドに横になって、聞く雨音は、癒し系ですね。「雨音はショパンの調べ」なんて歌がありましたが、そんなイメージでしょうか。

そうそう、先々週のブログで、「トータルチャラ」と書きましたが、そういった諺をずっと考えていて、やっと思い出しました。

「禍福は糾(あざな)える縄の如し」(史記 南越伝から)

こんな諺すら、さっと出てこなくなった自分が情けなくなりますね。まあ、それでも、考えていたら、ひょっこり出てきたので、安心しました。そういえば、五木寛之さんの講演本を読んでいたら、五木寛之さんは、人の名前が出てこないとき、「あいうえお・・・・」と順番に呪文の如く唱えながら、思い出そうとするそうです。みんな同じことをやるのだな、と、おかしくもあり、おもしろくもあり、ですね。

ハイ、「ラブコメ今昔」というライトノベル的なタイトルですが、主役は自衛隊です。有川浩さんの自衛隊ブコメシリーズの第二弾。ちなみに、第一弾は「クジラの彼」。そして、第三弾が、「空飛ぶ広報室」なのです。

実は、「空飛ぶ広報室」を買うつもりで、間違って買っちゃったのですが、間違ってよかったですね。ベタベタの自衛隊員の恋愛物語六編ですが、有川浩さんの手にかかると、ベタベタ感がなくなるのは不思議です。

それにもまして、自衛官の結婚感は、一般人では、とても想像できないような覚悟というものが必要であることを知らされました。これは、警察官、消防官などの国民の安全・安心を「身体を張って守る」人たちは、みなさん同じなのでしょう。そのことを国民は、どこまで理解しているのでしょうか?

『「非常事態で夫婦が両方死んだらどうする?」
千尋が一瞬で青ざめて俯いた。
「隊内結婚については様々な意見や選択があろうと思う。子供は作らないというのも一つの選択だし、実家の協力が得られるのなら、官舎の付き合いも含めて有事の預かりネットワークを作り、いざというときの後見人を立てておく方法もある。逆に言えば、そこまで考えて家庭を持っている若い隊員がどれだけいるか、若い人にそこまで考えろというのはシビアかもしれないが、自衛隊とはそういう職業だ。君も幹部たらんとうするなら、有事を架空の想定にするのはやめなさい」
言いつつ今村は席を立った。
「今村二佐!」
呼び止めた声の鋭さに振り向くと、千尋が今村に向かって立ち上がり、敬礼をしていた。
「貴重な訓辞を頂きましてありがとうございました!」
この娘も自衛官だな。―――まだまだ卵だが。』

ぼくたち国民は、自衛隊そして自衛隊員について、もっと、知らなければならないと思います。口だけで、自衛隊は、合憲だとか、違憲だとか、「戦争法」は反対だとか、はたまた、自衛隊員が戦死したら、どう責任をとるのか、などなど。自衛隊そして自衛隊員には、はなはだ失礼なことではないでしょうか。

その議論の渦中には、生身の人間の自衛隊員が「命をかけて」働いていることを忘れてはならないのです。「ラブコメ今昔」には、生身の人間の自衛隊員が存在します。是非、一読をお薦めします。