「夢幻花(むげんばな)」 

tetu-eng2016-10-16

「夢幻花(むげんばな)」
 東野 圭吾
 PHP文芸文庫
 2016年6月8日第3刷発行

ビックリポン!

ボブ・ディランが、ノーベル文学賞ボブ・ディランという名前は知っていますが、それは、「学生街の喫茶店」の歌詞で初めて知ったぐらいで、日本のフォークミュージシャンに影響があった人らしいぐらいです。「風に吹かれて」は、聞けば、あ〜この歌か、ぐらいのことしか解りません。すべてが「ぐらい」なのです。

もともと、洋楽には、興味がないし、英語の歌詞は、解らないし、そもそも、ノーベル文学賞を受賞した作家の本は、あまり読んだこともないし、の「し」つづきなのです。ただ、毎年、毎年、この季節になると、話題に上がる村上春樹さんが受賞できなかったのは、残念です。

でも、世界を見渡すと、ノーベル文学賞の候補者って、たくさん居るみたいで、それぞれの国の代表的な作家で、翻訳本が多い作家が、それぞれの国で話題になっているみたいです。日本では、村上春樹のファンの「ハルキスト」が、盛り上がっていますが、それは、多分、一部の読書家じゃないかな?いずれにしても、ノーベル文学賞の文学のテリトリーが拡がったことになるのでしょうか??

余談でした。東野圭吾さん、お久しぶりです。ご存じ、ガリレオシリーズの作者です。タイトルが、東野さん風ではないのですが、中味は、まさに、東野さん風ですね。なんとなく、科学的な雰囲気を醸し出しています。

『「黄色いアサガオは禁断の花、という話だ」
「禁断・・・・」蒼太は梨乃と顔を見合わせた。
「私がアサガオに興味を持ったのは、父親の弟、つまり叔父の影響だ。その人がいろいろな変化アサガオを咲かせるのを見ているうちに自分でもやりたくなった。だが叔父はある時私にいったんだ。どんな花を咲かせてもいいが、黄色いアサガオだけは追いかけるな、とね。理由を訊くと、あれはムゲンバナだからだ、といわれたよ」
「ムゲンバナ?」
「夢幻の花という意味だ。追い求めると身を滅ぼす、そういわれた」』

庭で花を咲かせることを趣味としていた老人が、何者かに、殺された。老人は、殺される前に、「黄色い花」を咲かせていた。しかし、現場からは、その鉢植えが亡くなっていた。老人の孫娘の梨乃と大学院生の蒼太は、「黄色い花」の秘密を追いかける。

青い薔薇が、自然界に存在しないように、黄色いアサガオも、いまは、存在しないらしい。江戸時代には、存在していたことは、確認されているが、なぜか、この世界から、抹殺されていた。その理由が、老人の死と、関連しているのか?

『梨乃はバックからハンカチを取り出し、目元をぬぐった。
「おじいさんのためにも、黄色いアサガオの謎を解かなきゃな」蒼太はいってみた。
うん、と答えてから梨乃が彼に充血した目を向けた。
「あたしたち、何だか似ているよね。一生懸命、自分が信じた道を進んできたはずなのに、いつの間にか迷子になっている」
全くだ、と蒼太は答えた。』

梨乃は、水泳のオリンピック候補選手だったが、いま、挫折している。蒼太は、原子力を研究していたが、福島原発事故で、途方に暮れている。そんな二人が、「黄色いアサガオ」の謎で、自分を取り戻そうとしている。

ぼくも、来年の夏は、ベランダで「アサガオ」の花を咲かせてみよう。できれば、「黄色いアサガオ」を・・・・・ね。