「チア男子!!」

tetu-eng2016-12-04

「チア男子!!」 
朝井 リョウ
集英社文庫
2016年6月6日第3刷発行

ぼくは、妄想癖があるかもしれない。

歩いているとき、寝ようとしているとき、電車に乗っているときなどに、ぼくの脳の中で、夢を見るように妄想が広がるのです。まるで、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS火10のドラマ)の主人公「みくり」(新垣結衣)のように、とんでもない妄想が脳を支配します。

みなさんは、そんなことはありませんか?ハッピーな妄想ならば、にやけて終わりですが、暗い妄想は、気持ちがダークになります。人間の脳は、つねに何かを考えているらしいです。これを「雑念」と言うそうです。「雑念」は、走馬燈のように流れます。

座禅や瞑想では、この「雑念」を振り払うトレーニングをします。なぜ、「雑念」を取り払う必要があるのか????「雑念」を取り払うと、心がスッキリするそうです。とすると、「雑念」は、心の重しになっているのでしょうか????考えていると、また、「雑念」に襲われそうなので、止めました。

話が、あらぬ方向に行きました。じつは、今、ドラマの「逃げ恥」がヒットしていて、とても、おもしろいと言うことが書きたかっただけなのですが・・・。なぜか、「妄想」に走ってしまいました。「妄想」もいいですが、ドラマは、そして、小説は、ラブコメ軽薄短小で、愉快ですね。

「チア男子!!」は、ラブコメではなく、チアリーディングにチャレンジする若者たちの青春グラフィティな物語です。青春は、一過性の落書きのような時季ということで、「青春グラフィティ」という言葉を見かけますが、「グラフィティ」は、「路地裏の落書き」という意味だそうです。まさに、青春は、「路地裏の落書き」という比喩に当てはまるかもしれません。

柔道場の道場主の長男の晴希(ハルキ)は、子供の頃から、姉の春子の背中を追いかけていました。様々な大会で、抜群の成績をあげる春子と比べて、柔道に限界を感じている晴季。大学1年のときに怪我をきっかけにして、柔道を止めることを決断します。しかし、姉の柔道の応援はした。姉に力を届けたい。
そこで、幼なじみの一馬(カズマ)に誘われて、男子チアのチームを創設します。

『「【誰かを応援することが、主役になる】」
チラシの一番下に書かれている文字。一馬の癖である右上がりの文字を目で追うと、さっきの一馬の声が鮮やかに蘇ってきた。
「【誰かの背中を押すことが、自分の力になる】・・・・」
春希は小さく小さく声に出していた。人を応援すること。誰かの背中を押すこと。その言葉にはなぜか、白色のイメージがあった。
今まで何回見てきたかもわからない、柔道着に包まれた春子の白い背中。』

チアのチームは8人以上16人以下。演技の時間は二分二十秒以上二分三十秒以内。そのうち、合計一分三十秒以内は音楽を使うことが可能。主な技は、モーション、タンブリング、スタンツ。小説の巻頭に、チア用語集と主な技が漫画で書いてあるので、読みながら、確認できます。

『「ハイ」
その瞬間、全身がバネになる。大音量の音楽と共に、高く高く飛び立つ。手を引き上げ、首を反らし、全身運動で後方回転をする。体に染み込んだ回転の感覚をなぞるようにして、腹の中心に力を込める。何十回もやってきた、演技のスタートであるバックフリップ。
飛ぶ。飛び上がる。飛び立つ。
回る。回れ。美しく。』