「東京物語」

tetu-eng2017-01-22

東京物語
奥田 英朗
集英社文庫
2005年6月6日第5刷発行

海の向こうでは、大統領の就任式で、あれやこれやと騒がしいようです。オバマさんが就任したときは、英文の就任演説が話題となり、ぼくも、辞書を片手に読んでみましたね。「Yes、we can!」は、流行語にもなりましたが、さて、トランプさんの演説の内容は、どうなんでしょうか?

これまで報道されているトランプさんの発言は、アメリカの大統領としては、ちょいと、下品なように感じます。まずは、人格高潔にして上品であることは、国家元首としての資格だと思います。何といっても、国民から尊敬されることが、肝要ではないでしょうか?

トランプさんには、「粗にして野だが卑ではない」ってのが、いいんじゃない。トランプさんにメッセージとして、Twitterで送信しようかと思いましたが、英文でどう訳せばいいのか??分からないので止めました。そうそう、トランプさんのTwitterは、フォロワーが、20,964,882人もいますよ。そのうち、一人がぼくですけどね。

『日本時間21日15:00ごろ「THANK YOU for another wonderful evening in Washington、D.C. TOGETHER、we will MAKE AMERICA GREAT AGAIN US」だそうです。』

と、余談でしたが、「東京物語」。この本も、長い間、書棚に埋もれていました。未読の本を整理していて、「おっ、奥田英朗の小説があった」ということで、読みました。奥田英朗の小説って、代表作は、「精神科医・伊良部シリーズ」ですが、これは、読んでいません。それ以外の「サウスバンド」「家日和」「我が家の問題」など、生活密着型小説が面白いです。

東京物語」は、1978年―1989年までの名古屋から上京した田村久雄の青春時代を、その時代の世相と照らし合わせながら、描き出した青春グラフィティ&生活密着型の小説です。昭和53年からの約10年間、ぼくが、就職して、サラリーマン生活をスタートした時代とマッチング。

『これが後楽園球場か。こんなところにあったのか。
今夜、キャンディーズの三人は、ここで最後のコンサートを開いているのだ。
車窓からは、一段高いスタンドが人で埋めつくされているのも見えた。それは圧倒的な光景だった。
うわーっ。久雄は心の中で驚きの声をあげていた。
電車が水道橋のホームに吸いこまれる。扉が開くとホーム一帯は「ワーン」という名状しがたい音の波に支配されたいた。
おお、歌声も聞こえるぞ。この声はランちゃんだ。』

1978年4月4日、キャンディーズのさよならコンサート(後楽園球場)は、独身寮の食堂で晩飯を食べながら、テレビで見ていたと思います。1980年10月5日、山口百恵のファイナルコンサート(武道館)も、独身寮の食堂で晩飯を食べながら、テレビで見ていたと思います。

1974年10月14日、長嶋茂雄引退試合は、大学の研究室でお勉強をしていました。これは、よく覚えています。近くの後楽園球場からの大歓声が、屋内まで響いていたので、ビックリした記憶があります。ぼくにとっての1970年代は、セピア色の時代からプルシアンブルーの時代でした。

『群集が壁によじ登っている。両手を高々と天に突上げている。花火が上がった。歓声がこだました。
「東西冷戦も終わったんだな」小倉がぽつりと言った。
「いいことじゃないの」と三輪。「世界はこれからが本番ってことよ。これが始まりさ」
「おれたちもそうだといいけど」久雄が酔いの回った頭で言う。
「青春が終わり、人生は始まる、か」
誰が言ったのかと思えば森下だった。なにを小癪な。
でもからかう気はなかった。いい顔をしていたのだ。
三十になった、男の顔だった。』

1989年11月10日ベルリンの壁崩壊。そのとき、まだ、35歳だった。