「しんせかい」

tetu-eng2017-03-12

「しんせかい」 
 山下 澄人
 文藝春秋3月号

第156回芥川賞直木賞(平成28年下半期)の発表がありました。芥川賞は、「しんせかい」(山下澄人)、直木賞は、「蜂蜜と遠雷」(恩田陸)。山下澄人さんは、ぼくにとっては、初見のかたです。恩田陸さんは、「夜のピックニック」で本屋対象を受賞して、その他にも、「六番目の小夜子」「ネバーランド」「訪問者」などを読んだ記憶があります。

恩田陸さんの作品は、サスペンス、青春小説などのジャンルだと思いますが、ぼくの感想としては、青春小説のほうが「いい感じ」ではないでしょうか?この作品も、青春群像小説らしいので、ぜひ、読んでみたいと楽しみにしています。

余談ですが、先週、テニススクールでラケットのガットの張替えを発注しました。以前は、ナチュラルを張っていたのですが、すこし高額なので、最近は、ナイロンに変更して、張替え頻度をふやしています。張替え後は、球を打った感覚が、スッキリするので、今週のスクールを楽しみにしています。

テニスの話のついでですが、このあいだ、スクールの最高齢者が85歳と聞いてビックリしました。その方は、60歳を過ぎてから、ご夫婦でテニスを始められたらしいです。驚くことに、奥さんも80歳らしいです。60歳を過ぎてからテニスを始めるというバイタリティーには、二度ビックリです。

テニスは、遣り様によるとは思いますが、随分と、高齢になってもできるものですね。ぼくなんぞは、まだまだ、ひっよっ子の丁稚奉公みたいなものです。ということで、ガットも張り替えたことだし、80歳のテニスを目指して、「頑張ろう!頑張ろう!頑張ろう!」の三連呼で締めくくりです。

はなしを本題に戻して、山下澄人さんの「しんせかい」の話です。

『「俳優て」
俳優になりたかったのかどうなのかはわからない。映画は好きでよく見ていた。ブルースリーの映画や高倉健の出るやくざ映画は学校をさぼって見に行ったりしていた。かっこいいなぁと思いながら見ていた。俳優になりたいというよりブルースリーになりたかった。高倉健になりたかった。』

山下スミトは、新聞記事の「二期生募集」に応募して【谷】に行くこととした。そこは、俳優や脚本家を要請する「虎の穴」のような場所。その場所は、北の方にあった。冬は、とても寒い。そこには、【先生】がいて、演技など教えてくれる。

【谷】では、一期生と一緒に、宿舎棟を建てたり、馬小屋を作ったり、農家の手伝いをしたり、自給自足の生活が基本である。スミトは、そこで、クリスマス、年末年始、そして、成人式を迎えた。誕生日のイベントもあった。

『「ぼくは」
【先生】は自分のことをそういった。
「人にものを教えられるような人間ではありません」
「だから黙って座っていれば何かを教えてくれるのだと思わないでください」
「ぼくから盗んでください」
「ぼくも君たちから盗みます」』

山下澄人さんは、倉本聰さんの「富良野塾二期生」ということで、この小説は、山下澄人さんの自叙伝ということらしいです。青春小説としては、飛び跳ねるような爆発力はないけれど、厳しい自然の中で青春の一時期を生活する「スミト」のセピア色の映像を見ることができる作品でした。