「光秀の定理」 

tetu-eng2017-03-19

「光秀の定理」
垣根 涼介
平成28年12月25日初版発行
角川文庫

「LUNCH PASSPORT」

超ランチ本の第11弾!以前から、こういう本があることは知っていましたが、紀伊国屋で平積みされていたので、手にとって見ると、かなり利用価値ありと判断して購入しました。

日本国神戸版(1000円)。500円ランチパスポート。要するに、このパスポートを提示すると、ランチが500円で食べられるという優れ本です。通常、750円のランチが500円というのが、平均的な価格帯です。問題は、ぼくのランチエリアに、利用可能なお店がどのくらいあるかということです。

調べました。三宮センター街の地下エリアで10店舗、三宮から二宮エリアで8店舗。全店、制覇すると、250円×18店舗 ― 1000円=3500円。うむ、3500円のお得。ただし、パスポートの有効期限が、5月18日までなので、今から、二周りぐらい利用可能とすると、7000円のお得。

それ以外に、レストランガイド的な利用価値も加味すると、お徳はあっても、損はない。ということで、現在、3店舗でパスポートを利用しました。お昼休みに出かける前に、どこへ行こうかと、本をめくる楽しみと、新しいお店とお料理を開拓できる楽しみがあって、満足満足。

ただし、肉料理、カレー、ラーメン、パスタが主流なので、そこは、これから編集部の努力に期待したいと思います。

余談は、おわり。「光秀の定理」ですが、ちょっと、風変わりな歴史時代小説。

兵法者の新九郎、辻博打の破戒僧の愚息そして浪人中の明智光秀。信長の侍大将となった光秀、長光寺城攻めのとき、愚息の4つの椀の博打を思い出す。城攻めには、四つの攻め口がある。そのうち一つに伏兵がいる。伏兵のいない攻め口は、四つに一つ。

『四つの椀がある。石が入っているのは、四つに一つ。石が入っている椀を選べば子の勝ち。まず子は、二つの椀を選ぶ。入っていなければ、残り二つのうち一つを選ぶ。』

胴元と子と、どちらが勝つでしょうか?キーポイントは、子に入っている椀を選ばせるということです。胴元は、残った椀。とした場合に、胴元が勝つ確率は???

『三つの賽のうち、一つでも六の目が出れば、相手の勝ち。出なければ胴元―――
一つの賽で、六の目が出るのは、六つに一つ・・・・これは確かだ。
その賽が、三つある。ということは、どれか一個でも六の目が出る場合は、その三倍・・・二つに一つだ。だから胴元と子が勝つ割合は、どう考えてもそれぞれ半々のはず。』

これを算式にすると、1/6+1/6+1/6=1/2=50%となる。

それなのに、どうして、最終的には胴元が勝つ。なぜでしょう???

これを算式にすると、1−((6×6×6)/(6×6×6)−(5×5×5)/(6×6×6))=58%かな?

垣根涼介さんの初めての歴史時代小説。歴史時代小説ですが、主題となっているのは、確率論。読者は、小説のはじめから終りまで、ずっーと、「なぜだろう???」と首をひねるでしょう。ぼくは、数学なんて、高校時代から、ずーーーーーーと、縁がないので、チンプンカンプン。

これじゃ、面白くないので、この小説から、心に残った一節。

『「真理(ダンマ)だ。時さえ経てば、生きとし生けるものは、すべてそれなりに収まっていくという真理だ」
「ダンマ?」
そうだ、と愚息はうなずく。「どんなに辛かろうが、そこであがこうがあがくまいが、やがて今という時間は過ぎていく。すべてはすぐに過去となり、良ければ良いなりに、悪ければ悪いなりに収まっていく。その世界で安定して、また気楽に息ができるようになる。気楽に息ができるようになれば、また新しい世界もみえてくる」』