「旅猫リポート」

tetu-eng2017-05-28

旅猫リポート」 
有川 浩
2017年2月15日第1刷発行
講談社文庫

不安=こだわり

人間、「こだわり」を捨てれば「不安」は解消される。物事に執着しなければ、そこから雑念が消え、ストーリーを妄想しなくなる・・・ということらしいです。「物事に執着しない」ということは、余程の聖人君主の為せる業であり、ぼくなど、凡人中の凡人は、何事にも「こだわり」そして「執着」して、頭の中は、妄想であふれかえりそうになるものです。

そんなおことを考えていると滅入ってしまうので、土曜日、久しぶりに西神テニス(会社の仲間のサークル)に行きました。午前中、何も用がないので、まだ、お休み中の細君と相棒に気づかれないように(まあ、気づいていると思うけど)、家を出ました。初夏の爽やかな早朝、デイリーヤマザキでサンドウィッチを食べながら深呼吸。気持ちいいですね。

そのまま、テニスコートに行ったら、駐車場でIくんが車の掃除中。ついでに、ぼくの車も掃除していただき、ありがとうございました。持つべきものは友達です。テニスコートも、新緑につつまれて、風も心地よく、今が、一番、素敵な季節です。約2時間、テニスに興じたり、ガハハハッと笑いながら、世間話に花を咲かせたり、ストレス解消の妙薬です。

ということで、今週は、ぼくの大好きな有川浩のロードノベルです。

吾輩は猫である。名前はまだ無い。・・・と、仰ったえらい猫がこの国にいるそうだ。
その猫がどれほどえらかったのか知らないが、僕は名前があるという一点においてのみ、そのえらい猫に勝っている。
もっとも、その名前が気に入っているかどうかはまた別の話である。何故なら僕につけられた名前は僕の性別に合致していないこと甚だしいからだ。』

僕の名前は、「ナナ」。野良猫である。ある日、僕は車に轢かれて、瀕死のケガを負ってしまった。助けてくれたのが、「サトル」。「ナナ」という名前は、「サトル」がつけてくれた。ある日、サトルは、ナナと旅に出ることにしました。その旅は、ナナを引き取ってくれる飼い主探しの旅です。なぜ、飼い主探しか?それは、この本を読んでください。

『サトルと暮した五年間、僕はいつだって聞き分けのいい猫だった。たとえ、僕の一生の鬼門である病院に連れて行かれるときだって、ケージに詰め込まれるのに抵抗して大騒ぎなんかしない猫だった。
さあ、行こう。サトルのルームメイトとして申し分ない猫だった僕は、サトルの旅の道連れとしても申し分ない猫であるはずだ。
サトルは僕のケージを提げて、銀色のワゴンに乗り込んだ。』

サトルとナナは、銀色のワゴンで、サトルの小学校、中学校、高校、大学の友達を訪ねますが、なかなか、ナナのお見合いは成功しません。この旅は、サトルの人生を振り返る旅でした。そして、その旅の最後に待ち受けていることは・・・・。

また、泣いてしまいました。とにかく、最近、ちょっとしたことで、涙が滲みだし、そして、ポロポロと頬を伝って流れ出します。子役と動物には勝てないといった大俳優がいますが、小説も、子供と動物には勝てません。有川浩さんの真骨頂を垣間見た小説でした。お薦めです。