つい、この間、「還暦」を迎えたと思ったら、もう、今年は、65歳になります。さてさて、もうりっぱな「老人」である。この現実から、目をそらせることなく、「老人」としての自覚、心構えなどを、きちんと心がけねばならない。
そんな気持ちで、「知の巨匠」と言われた方の「老人指南書」を読んでみたというわけです。
河合隼雄さんは、日本を代表するユング派の臨床心理学者であることは、ご承知のとおりです。フロイト、ユングは、19世紀を代表する心理学者であることもご承知のとおりです。そもそも、心理学とはなにか?というと、結論は、「人の心などわかる訳がない」。本人でさえわからない。そんな分野を研究する学問らしいです。
フロイト、ユングの時代は、抑圧の時代であり、とくに女性のノイローゼが学問の対象となったらしい。現代も、神戸の地下鉄の各駅に「心療内科」があるのだから、「ココロの病」を患う方がおおいいことは想像できる。そう言っている、ぼくも、安定剤や睡眠導入剤のお世話になっているのだから、「ココロの病」の患者の一人である。
そうかというと、例えば、消費心理学という分野もある。「景気の気」は人の心理であると言われている。景気がよくなるのも、悪くなるのも、人の消費に対するマインドの変化が大きな要因であるということらしい。これは、病気とは関係のない心理学の世界である。
そういった意味では、心理学と言う学問は幅が広い。むかし、「犯罪心理学」を勉強したことがある。なぜ、犯罪を犯す人とそうでない人がいるのか?犯罪を犯す人の幼児体験から分析が始まる。これは、フロイト、ユングの時代から同じである。
精神分析は、幼児体験がおおきな分析対象となっている。でも、幼児のときの記憶なんてないよね。でも、その記憶が無意識下にあると言うことらしい。その無意識下にあるものを意識化することにより、ノイローゼや犯罪にいたる「なにか?」を見つけ出すということらしいです。その手法が「カウンセリング」らしいのですが・・・・・?
随分と長い余談になってしまいました。
この本は、読売新聞に連載した河合隼雄さんの「短いコラム」(110回)をまとめたものです。したがって、短いだけに含蓄があり、一つのコラムごとに、読後、考えさせられるものがあります。110篇のコラムのうち、ひとつご紹介します。
『日野原先生の強調されたことに、「老いてはじめる」というのがあった。年老いても、何か新しいことをはじめることが、老いを意義深く生きるうえで、非常に効果的である、とのことである。趣味でも、ちょっとした仕事でも。
先生の書かれたものを拝見すると、「創める」と、創造の創の字を用いておられるので、その意味の深さがわかる。
考えてみると、「死」も新しい次の世界のはじまりなのかも知れないのだから、老いたからといって「終わり」のことばかり考えず、「はじめ」の練習もある程度しておいたほうが「死」も迎えやすい気もするのだが。』
そう、「ちょっとした仕事」を「はじめる」のが、いいかも?さてさて、これも、「難しい課題」である。なにかを「創め」ようと思って、結局、ブラブラと過ごすのも、それも人生かもしれません。