「なんとなく、クリスタル」

tetu-eng2018-10-07

「なんとなく、クリスタル」
田中 康夫
1983年4月4日初版
2015年1月20日新装版3刷
河出文庫

ひょんなことから、「なんとなく、クリスタル」を読みました。「ひょんなこと」が何かは、話が長くなるのでカットします。

1980年代、バブルの全盛期、ベストセラーになった本です。当時、ぼくは、30代ですが、バブルとは、ほとんど無縁でしたね。まだ、若かったので、生活費以外、余力はなかったうえに、マージャン、競馬で、逆に、損をしていましたね。

御利益を得たというと金利が7%なんていう時代だったので、長期信用銀行の発行した債券、通称「ワリチョー」を購入して、いくぶんを車の購入費に当てたくらいですかね。

記憶にある「ヒドイ話」は、銀行がNTT株の購入ローンを売り出して、NTT株を担保に貸し出しをしていたこと。もちろん、土地取引では、もっと「ヒドイこと」をしていたのかもしれませんが、とにかく、銀行という機関は信用してはいけません。もちろん、証券会社も同じです。それは、低金利の今の時代も同じです。

いまは、ぼくも、多少の余裕ができたので、投資信託、国内株を多少・・・ほんの多少、保有していますが、ぼくの投資信念は次のとおりです。

一、購入する商品は自分で勉強して、決定する。
二、すべて自己資金(余裕資金)で購入する。信用取引はしない。
三、一喜一憂する。

以上です。

投資信託、株は「バクチ」という人もいますが、正直、定期預金と比べれば「バクチ」です。競馬も同じですが、競馬は、一蹴で勝負が決まる「潔さ」が魅力ですが、投資信託、株は、長く「一喜一憂」するのが魅力です。さらに、売らない限りは「利益」も「損」も現実化しない。「含み益」「含み損」のままということです。ただし、現実化するのは、「配当」。だから、ぼくは、インカムゲイン派ですね。

そもそも、機関投資家などが瞬時に、大量に売り買いする世界で、個人投資家が太刀打ちできるはずがありません。だから、キャピタルゲインのPRには見向きもせずに、ひたすら、自分の目と耳を信用して、インカムゲインで満足する。そして、「一喜一憂」を楽しむ。

やれやれ、「なんとなく、クリスタル」の話になりませんね。この本の特徴は、右開きが物語り、左開きは脚注。こんな構成の本は、初めてです。もちろん、漱石などは、巻末に脚注がありますが・・・その脚注が、面白く書いてあります。たとえば、最初の脚注は、

『1、ターン・テーブル プレーヤーのうち、レコードを載せる部分。甲斐バンドやチューリップのドーナツ盤ばかり載せていると、プレーヤーが泣きます。』

モデルのバイトをしている女子大学生が、主人公。まさに、バブル絶頂期に小遣いに余裕のある女の子や男の子の自由?な生き方が、何の感慨、批判、感銘もなく、淡々と描かれています。35年を経て、初めて読みましたが、新鮮さを感じましたね。

『「クリスタルなのよ、きっと生活が、なにも悩みなんて、ありゃしないし・・・・。」
と私が言うと、彼は、
「クールって感じじゃないよね。あんまりうまくいえないけど、やっぱり、クリスタルが一番ピッタリきそうかな〜。」』