「ジーヴスの事件簿 大胆不敵の巻」

ジーヴスの事件簿 大胆不敵の巻」
P・G・ウッドハウス
2018年11月30日第11刷
文春文庫

さて、今週は、まじめに「読書雑感」を書きます。「読書雑感」が面白くない人は、読み飛ばしてください。ただし、後悔するかもしれません。

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ジーヴスの事件簿 才智縦横の巻」「ジーヴスの事件簿 大胆不敵の巻」と、2冊を連続して読みました。この本は、前回も書きましたが、皇后陛下のご愛蔵の本らしいです。そういった記事が、今月の文藝春秋に掲載されていました。なぜ、この本を皇后陛下が好まれたのか・・・その理由を、読了後のぼくは、???、理解できませんでした。

か、と言って、面白くなかったという意味ではありません。ひょっとしたら、皇后陛下は訳本ではなく、原文で読まれたのかもしれません。どうしても、小説は、原文と訳本では、細かい描写などに差があるのは致し方ないことだと思います。ぼくは、残念ながら、原文で読むほどの英語力がないので、世界一翻訳技術の発達した日本語訳で読みましたが・・・。

余談ですが、日本人が中高大と6年~8年ぐらい英語を勉強して、語学力が育たない一番の原因は、明治以降の翻訳技術の高さらしいです。わざわざ、原文で読まなくても、あらゆる外国図書(専門書を含めて)が高度な翻訳技術で和文となっているからしいです。まあ、これは、語学力がない人間のいい訳かもしれませんが・・・・。

話を元に戻します。

時代背景は、20世紀初頭のロンドン。ヨーロッパ列強の植民地政策にかげりが見え始め、やがて第二次世界大戦(1915年~)、世界恐慌(1930年)へと歴史は流れていく、ちょうど、その前ぐらいのイギリスのロンドンが舞台。

登場人物は、イギリスの独身の青年貴族バーティと彼を取り巻く貴族の親戚、友人、そして、彼の極めて有能な執事ジーヴス。

物語は、主人公バーティの周辺で巻き起こる事件・・・いわゆる殺人事件などではなく、家庭内トラブルや友人ビンゴの恋愛トラブルなど・・・を、有能なる執事ジーヴスが、見事に解決するという連続短編のユーモア小説。

『で、ジーヴスのことなんだが・・・うちの従僕のジーヴスさ・・・僕らの関係は、どう言ったものだろう?僕がやつに頼りすぎだと思っている人間は多い。それどころかアガサ叔母なんぞは、ジーヴスのことを僕の飼い主とまで言った。でも、僕に言わせれば「それで何が悪い?」さ。あの男は天才だ。首から上の働きにかけては、誰一人かなうものはない。ジーヴスが来て一週間もたたないうちに、僕は自分のことを自分で処理するのをやめてしまった。』

 これほどに信頼のおける従僕なんて素晴らしいと思いますが、逆に言うと、ここまで信頼をする主人もなかなかのものです。しかし、小説では、主人公バーティは、ジーヴスを頼らずに自分でアレコレ解決しようとしますが、うまくいかずに泥沼に入って、結局、ジーヴスのお世話になるというのが、お決まりのストーリーなのです。

それにしても、この時代の英国貴族の生活は、仕事もしないで、お茶とパーティと競馬、ときには、テニス、ゴルフなどの遊び三昧だったようですが、これでは、やがて、やってくる帝国主義の崩壊は、必然的な時代の流れなだったのでしょう。