「蜜蜂と遠雷 上・下」

蜜蜂と遠雷 上・下」
恩田 陸
平成31年4月10日初刷発行
冬幻舎文庫

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予告どおり、「蜜蜂と遠雷」。2017年の直木賞本屋大賞のダブル受賞した作品。わりと、早く文庫本になりました。まあ、2年ほど待ったということです。単行本は高いし、重いので、最近は、単行本の新刊本はぐっと我慢して、文庫本になるのを待ち望んでいます。ところが、単行本は、1,944円。文庫本は、2冊で1,576円。その差△368円。早く読めるという時間便益を考慮すると、単行本でもメリットあり。ですが、重いというネガティブを考慮すると・・・・まあ、どっちでもいいか。

ということで、余談ですが、今月号の文藝春秋に、ぼくと同じ意見の論評がありました。「働き方改革が日本をダメにする」(丹羽宇一郎伊藤忠商事の代表、そして、前中国大使。「仕事を制限することは幸福を制限することだ」・・・おっしゃるとおり。「24時間働けますか?」(昔懐かしい「リゲイン」のテレビCM)働く世代の働き方を規制して、一方では、シニアに70歳まで働けという政府の方針には、まったく、理解も同意もできません。

若いときは、身を粉にして働いてこそ、そこに幸福感がある。やがて、シニアになったとき、あのときの苦しかったことを思い出し、そして、仲間と手柄話をする。つまらないという人もいるかもしれないが、それが、昔から、人の生き方ではないかな?手柄話の一つもできないのは、ぼくは、不幸だと思います。

シニアが70歳まで働くことを否定するわけではありませんが、国が強制することではないし、この調子では、65歳すぎてフラフラしていたら、白眼視されそうです。要するに、「働く世代の働き方規制」、「シニア世代の働き方強要」は、個人の幸福を制限することだということです。政府が、ことさら法律で縛らなくても、自由経済のなかで、「見えざる手」が動きます。

そこで、「蜜蜂と遠雷」。ピアノコンクールをモチーフにした小説です。モデルになったのは、浜松ピアノコンクールらしいです。

『ステージドアが開いた。
ぞろぞろとオーケストラの団員が、舞台に吸い込まれていく、客席の喝采が、さざなみのように伝わってくる。
ああ、音楽が満ちていく。
亜夜はそう感じた。
流れのように一人一人の音楽がステージに流れ込んでいき、ひたひたとステージの上に満ちていく。
満々と湛えられた音楽を、あたしたちは世界に向って流し出す。観客の心という河口を目指して、・・・・・・
さあ、音楽を。
さあ、あなたの音楽を。
さあ、これから私たちの音楽を、と、
亜夜はかすかに微笑んで頷き返す。』

 バッハ、ベートーベン、リスト・・・学校の音楽の授業で習った作曲家のピアノ曲。まったく、知らないタイトルが並ぶ。プロコフェエフ「ピアノ協奏曲二番」・・・知らない。でも、その曲からイメージされる情景が小説のなかを流れていく。クラッシクを聴きながら、そんな経験はないよ。でも、聴きながらイメージできたら、いいね。

この小説を読んだら、クラッシックが聴きたくなる。きっと、あなたも!